機械製図では、図面の中にさまざまな記号が使われます。

前回の記事では、機械製図の基本用語や「φ」「R」「C」「M」など、初心者が最初に覚えたい記号を中心に解説しました。

今回はその補足として、実際の図面でよく使われる製図記号を一覧形式で整理しながら、それぞれの意味や読み方をわかりやすく解説します。

製図記号を理解できるようになると、図面に書かれている加工内容や品質要求を読み取りやすくなります。
初心者の方は、まず「この記号は何を伝えるためのものか」を意識しながら見ていきましょう。


製図記号とは?

製図記号とは、図面上で形状・寸法・加工方法・仕上げ・精度などを簡潔に伝えるための記号です。

機械図面では、すべてを文章で説明すると図面が見づらくなってしまいます。

そのため、決められた記号を使って、

  • 穴の大きさ
  • ねじの種類
  • 面取りの寸法
  • 表面の仕上げ状態
  • 寸法の許容範囲
  • 加工してはいけない部分
  • 基準となる位置

などを表します。

つまり製図記号は、設計者・加工者・検査担当者が同じ意味で図面を理解するための共通ルールです。


製図記号を覚えるメリット

製図記号を覚えると、図面を読むスピードと正確さが上がります。

例えば、図面に「10キリ」と書かれていれば、「直径10mmのドリル穴」という意味だとすぐに判断できます。

また「M6タップ」と書かれていれば、「M6のめねじを加工する穴」だとわかります。

記号の意味がわからないまま図面を読むと、加工方法や部品形状を誤解してしまう可能性があります。

特に機械加工では、わずかな読み違いが部品不良や組立不具合につながることもあります。

そのため、基本的な製図記号は早い段階で覚えておくことが大切です。


製図記号一覧

ここからは、機械図面でよく使われる記号を種類ごとに紹介します。

初心者の方は、すべてを一度に暗記する必要はありません。
まずは、実際の図面でよく出てくる記号から少しずつ覚えていきましょう。


形状を表す製図記号

形状を表す記号は、部品の外形や加工される部分の形を示すために使われます。


φ:直径

読み方:ファイ、まる、直径

「φ」は円や穴の直径を表す記号です。

例:

φ20

この場合、直径20mmという意味になります。

丸穴、丸棒、円筒形状などに使われる、機械図面では非常に重要な記号です。


R:半径

読み方:アール

「R」は半径を表す記号です。

例:

R10

この場合、半径10mmの円弧や丸みを意味します。

角部の丸み、円弧形状、曲面部分などに使われます。


SR:球の半径

読み方:エスアール

「SR」は球面の半径を表します。

例:

SR15

この場合、球の半径が15mmという意味です。

通常のRが平面的な円弧に使われるのに対し、SRは球面形状に使われます。


Sφ:球の直径

読み方:エスファイ

「Sφ」は球の直径を表す記号です。

例:

Sφ30

この場合、球の直径が30mmという意味になります。

球状の部品や丸い先端形状を表すときに使われます。


□:正方形

読み方:かく、しかく

「□」は正方形を表します。

例:

□25

この場合、一辺が25mmの正方形という意味です。

四角棒や正方形の突起、角形状の寸法を示すときに使われます。


C:面取り

読み方:シー、面取り

「C」は角を45度斜めに削る面取りを表します。

例:

C2

この場合、角を2mm分面取りするという意味です。

面取りは、バリ防止、組立性向上、安全性向上などを目的として指定されます。


穴加工に関する製図記号

穴加工は機械図面で非常によく出てきます。

穴には、貫通穴、止まり穴、ねじ穴、ザグリ穴、皿穴などがあります。
それぞれ意味が異なるため、記号の違いを理解しておくことが大切です。


キリ:ドリル穴

意味:ドリルであける穴

例:

8キリ

この場合、直径8mmのドリル穴を意味します。

一般的な丸穴を表すときによく使われます。

φ8キリと表記するところもあるが、キリもみするドリルは丸いので、丸を表すφの補助記号はJISでは表記しない。ただし会社ごとに決まりがあるので実際の使用は要確認


通し:貫通穴

意味:穴が部品を貫通していること

例:

6キリ通し

この場合、直径6mmの穴が部品を完全に貫通しているという意味です。

穴が途中で止まっているのか、反対側まで抜けているのかは、加工に大きく関係します。

通しの表記もJISでは規定されていない。下記で説明する穴の深さを示してなければ貫通といった意味になる。ただし会社ごとに決まりがあるので実際の使用は要確認


深さ:止まり穴

意味:穴が途中で止まっていること

例:

φ10深さ15

この場合、直径10mmの穴を深さ15mmまで加工するという意味です。

貫通穴と止まり穴を間違えると、部品の強度や機能に影響することがあります。


ザグリ:座ぐり加工

意味:ボルトの頭などを沈めるための段付き穴

例:

10キリ、18ザグリ深さ5

この場合、直径10mmの穴をあけ、さらに直径18mmで深さ5mmの座ぐりを加工するという意味です。

六角穴付きボルトの頭を部品表面より出さないようにしたい場合などに使われます。


皿ザグリ:皿ねじ用の加工

意味:皿ねじの頭を沈めるための円すい形状の加工

皿ザグリは、皿ねじの頭が部品表面と同じ高さ、または表面より出ないようにするために使います。

例:

φ6皿ザグリ

皿ねじを使う場所では、通常のザグリとは形状が異なるため注意が必要です。


ねじに関する製図記号

ねじは、部品同士を固定するためによく使われます。
図面では、ねじの種類や大きさを記号で表します。


M:メートルねじ

読み方:エム

「M」はメートルねじを表す記号です。

例:

M8

この場合、呼び径8mmのメートルねじを意味します。


M6タップ:めねじ加工

意味:M6のめねじを加工すること

例:

M6タップ深さ12

この場合、M6のねじ穴を深さ12mmまで加工するという意味です。

ボルトをねじ込む穴に使われます。


ピッチ:ねじ山の間隔

ピッチとは、ねじ山とねじ山の間隔のことです。

例:

M10×1.5

この場合、M10のねじで、ピッチが1.5mmという意味です。

通常の並目ねじではピッチを省略する場合もありますが、細目ねじなどではピッチの指定が重要になります。


寸法に関する製図記号

寸法記号は、部品の大きさや位置を正しく伝えるために使われます。


±:プラスマイナス公差

意味:寸法の許される誤差範囲

例:

50±0.1

この場合、49.9mmから50.1mmまでが許容範囲になります。

公差は、部品の精度や組立性に大きく関わります。


上下公差

寸法の上側と下側で許される範囲が異なる場合に使われます。

例:

50 +0.2 / 0

この場合、50.0mmから50.2mmまでが許容範囲です。

軸と穴のはめあいなど、片側だけに余裕を持たせたい場合に使われます。


PCD:ピッチ円直径

読み方:ピーシーディー

PCDは、複数の穴が円周上に配置されるときの基準となる円の直径です。

例:

4-φ10 PCD80

この場合、直径10mmの穴が4か所、直径80mmの円周上に配置されているという意味です。

フランジや円形プレートのボルト穴配置でよく使われます。

PCDの表記もJISでは規定されていない。


n-φd:同じ穴が複数ある場合の表記

複数の同じ穴を表す場合、次のように書かれることがあります。

例:

4-φ8

この場合、直径8mmの穴が4か所あるという意味です。

穴の数を読み落とすと、加工ミスにつながるため注意が必要です。


表面性状に関する製図記号

表面性状とは、部品表面の粗さや仕上げ状態のことです。

部品によっては、表面をなめらかに仕上げる必要があります。
特に、摺動部や密封面、ベアリングが接触する部分などでは重要です。


表面粗さ記号

表面粗さ記号は、加工面の仕上がり具合を指示する記号です。

図面上では、チェックマークのような形の記号で表されます。

例:

Ra3.2

この場合、表面粗さの目安としてRa3.2を指定しているという意味です。

数値が小さいほど、表面はなめらかになります。


加工目記号

加工目とは、加工によってできる表面の方向性のことです。

例えば、旋盤加工やフライス加工では、加工の跡が一定方向に残る場合があります。

機能上、加工目の方向が重要な場合には、図面で指示されます。


幾何公差に関する製図記号

幾何公差とは、寸法だけでは表しきれない形状や位置の精度を指定するための記号です。

初心者には少し難しく感じるかもしれませんが、精密な部品では非常に重要です。

ここでは、代表的なものを簡単に紹介します。


真直度

真直度は、線や軸がどれだけまっすぐであるべきかを示します。

長い軸やガイド部品などで使われます。


平面度

平面度は、面がどれだけ平らであるべきかを示します。

プレートや取付面など、平らさが必要な場所で指定されます。


平行度

平行度は、基準となる面や線に対して、どれだけ平行であるべきかを示します。

部品同士の位置関係が重要な場合に使われます。


直角度

直角度は、基準に対してどれだけ直角であるべきかを示します。

ブラケットや取付面などでよく使われます。


位置度

位置度は、穴や軸などの位置が、基準に対してどの範囲に収まるべきかを示します。

複数の穴を正確に配置する必要がある場合などに使われます。


同軸度・同心度

同軸度や同心度は、複数の円形形状の中心がどれだけ一致しているべきかを示します。

回転部品やシャフト、ベアリング取付部などで重要になります。


基準を表す記号

図面では、寸法や公差を判断するための基準が必要になることがあります。

この基準を「データム」と呼びます。


データム記号

データムとは、測定や加工の基準となる面・線・点のことです。

例えば、ある面を基準Aとして、そこから穴の位置を決める場合があります。

基準があいまいだと、加工者や検査者によって判断が変わってしまうため、精度が必要な図面ではデータム指定が重要になります。


溶接に関する製図記号

機械装置やフレーム構造では、溶接記号が使われることがあります。

溶接記号は、どの部分をどのように溶接するかを表します。


すみ肉溶接

すみ肉溶接は、2つの部材が直角に交わる部分などで使われる代表的な溶接方法です。

図面では、三角形のような記号で表されます。

架台、ブラケット、フレームなどでよく使われます。


全周溶接

全周溶接は、対象部分を一周すべて溶接する指示です。

水密性や強度が必要な部分で使われることがあります。


断続溶接

断続溶接は、一定間隔で部分的に溶接する方法です。

必要な強度を確保しながら、熱による変形を抑えたい場合などに使われます。


その他よく使われる図面表記

製図記号そのものではありませんが、図面でよく見る表記も覚えておくと便利です。


材質

図面には、部品に使用する材料が記載されます。

例:

SS400
S45C
A5052
SUS304

材料によって強度、重さ、耐食性、加工性が異なります。

図面を読むときは、形状や寸法だけでなく材質も確認しましょう。


熱処理

熱処理とは、材料を加熱・冷却して硬さや性質を変える処理です。

例:

焼入れ
焼戻し
高周波焼入れ

摩耗しやすい部品や強度が必要な部品で指定されることがあります。


表面処理

表面処理は、部品の表面に防錆や耐摩耗性、外観向上などの目的で処理を行うことです。

例:

黒染め
無電解ニッケルメッキ
アルマイト
塗装

表面処理の指定を見落とすと、部品の耐久性や外観に影響することがあります。


製図記号を見るときの注意点

製図記号を読むときは、記号だけを見て判断しないことが大切です。

同じ記号でも、図面上の位置や引出線の向きによって、どの部分を指しているかが変わります。

特に注意したいポイントは次のとおりです。

  • 記号がどの形状を指しているか確認する
  • 穴の数や深さを見落とさない
  • 貫通穴か止まり穴かを確認する
  • 面取りやRの位置を確認する
  • 公差や表面粗さの指定を見落とさない
  • 注記欄や表題欄の指示も確認する

図面は、記号・寸法・注記・投影図を組み合わせて読むものです。

ひとつの記号だけで判断せず、図面全体から意味を読み取ることが重要です。


初心者がまず覚えるべき製図記号

初心者が最初に覚えるなら、次の記号から始めるのがおすすめです。

記号・表記意味
φ直径
R半径
C面取り
Mメートルねじ
t板厚
キリドリル穴
タップめねじ加工
通し貫通穴
深さ止まり穴の深さ
PCDピッチ円直径
±寸法公差
Ra表面粗さ

これらは、実際の機械図面でよく出てくる基本的な表記です。

まずはこのあたりを理解しておくと、図面を読むときの不安がかなり減ります。


製図記号は実際の図面で覚えるのが近道

製図記号は、一覧表を見て暗記するだけではなかなか身につきません。

実際の図面を見ながら、

「このφは穴の直径を表している」
「このC2は角の面取りを指している」
「このM8タップはボルトを入れるためのねじ穴だ」

というように、形状とセットで確認するのが効果的です。

また、自分で簡単な部品図を描いてみるのもおすすめです。
記号を使って図面を描くことで、読む力も自然と伸びていきます。


まとめ

製図記号は、機械図面に必要な情報を短く正確に伝えるための重要なルールです。

図面に使われる記号を理解することで、部品の形状、加工方法、精度、仕上げ状態などを正しく読み取れるようになります。

今回紹介した中でも、初心者がまず覚えたい記号は次のとおりです。

  • φ:直径
  • R:半径
  • C:面取り
  • M:メートルねじ
  • キリ:ドリル穴
  • タップ:めねじ加工
  • 通し:貫通穴
  • 深さ:止まり穴
  • PCD:穴配置の基準円
  • Ra:表面粗さ
  • ±:寸法公差

製図記号は種類が多いため、最初からすべてを完璧に覚える必要はありません。

まずはよく使われる記号から理解し、実際の図面を見ながら少しずつ慣れていきましょう。

記号が読めるようになると、図面はただの線や数字ではなく、部品を作るための具体的な情報として見えるようになります。