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コラム その1 手書き製図の大切さ

手書き製図の大切さ

現在はコンピュータにインストールされたCADを使い設計から製図まで行うことが主流となっており、CADの操作をある程度習得すれば誰でも簡単に綺麗な線が引けるようになる可能性があります。

コンピュータでの設計・製図は冒頭でも触れた”CAD”(キャド)といったソフトウェアを用いて行います。
CADが登場以来、設計の現場に多くのメリットをもたらしました。
CADのメリットとして一例をあげると
 ・綺麗な線を容易に正しい大きさで描くことができる
 ・図に合わせて正しい寸法を記入してくれる
 ・変更の際の編集が簡単にできる
 ・技術情報を電子データとして容易に保存できる
などなど他にも数えきれないほどのメリットがあります。

CADが無い時代には、ドラフターやコンパス、テンプレートなどを使い綺麗な線を引くためには多くの時間を費やし繰り返し練習して技術を習得する必要がありました。図を正しく描くことも当然として大事ですが、過去実績などの参考図を用いた設計では形状が実寸でない場合も多く、記入された寸法を正として寸法を計算しながら記入する計算力が重要でした。
また、設計完了後に仕様変更があり出来上がったばかりの図面の大部分を消しゴムで消して描き直すことも日常的にありました。
完成した図面を保管するにも大きなサイズの用紙が大量の枚数となり図面庫といった専用の部屋が必要でしたし、過去の実績を利用するにもそのまま使うことはほとんど出来ないので一部をコピーし変更部分を書き足したりしていました。この事を考えてもCADは大変便利であることが分かります。

しかし、CADもドラフターやコンパス同様に図面を描くための「道具」に過ぎません。
どんなに高価なCADがあるからといってもCAD自身が設計をして図面を描くわけではなく、設計は技術者のイマジネーション、知識、経験により生みだされるものです。

昨今、技術者の育成に時間が掛かると言われています。単にコミュニケーションの問題もあるとは思いますが、CADのディスプレイでは図を見やすくするために拡大したり縮小したりしながら作業を進めるために物の実際の大きさが分かりにくかったり、周りから作業手順などが見えにくく都度指導することが難しいのも要因の一つではないかと考えられます。

手書きの時代は図面を書き出す前に描き直しの手間をなるべく減らすために多くの確認作業を行い、更に用紙にどの様に配置すれば効率的に図を表現することができるか完成状態を頭の中でイメージした上でやっと作図の作業に入っていました。また、設計する物にもよりますが尺度を実寸で描く事を基本としていますので実際の大きさをイメージしやすいメリットもあります。またドラフターでは隣の席から図面が丸見えなので、都度作業手順などのアドバイスがしやすく、逆に先輩の作業内容を目で見て技術を盗む事も日常的に行われていました。
この様に手書きでの製図作業は技術者の教育といった面では大変優れた効果を発揮します。

だからと言って今の時代に若手技術者はCADを使わずに手書きで実務をこなすべきだとは思いませんし、現実的にCADを中心とした業務体系を考えればデータ化できない時点であまりにも非効率のため不可能であろうと思います。
ただ導入学習の中には手書きを取り込んで、効率的な図面の配置、加工手順を見据えた図面にするための考える力や線1本を綺麗に引く大切さを学んだ時間は必ず技術者としての将来に役立つはずです。
このことからOJTにて手書き製図の手法をうまく取り込む事ができれば技術者の成長も促進できると信じています。