はじめに

機械設計では、新規装置だけでなく、既設設備を改造するための部品を設計することがあります。

たとえば、

  • カバーの追加
  • ストッパの追加
  • センサーの追加
  • シリンダの追加
  • ガイドの追加
  • 安全対策部品の追加
  • 老朽化した部品の更新
  • 作業性改善のためのブラケット追加

などです。

既設設備の改造は、図面上だけで完結しにくい設計です。

現場には、既存部品、配線、配管、カバー、架台、作業スペース、周辺設備があります。

また、古い設備では、図面が残っていなかったり、図面と現物が違っていたりすることもあります。

今回は、機械設計初心者向けに、
「現地改造部品を設計するときの注意点」
について解説します。


既設図面だけを信用しすぎない

現地改造でまず注意したいのは、既設図面だけを信用しすぎないことです。

もちろん、既設図面があれば大きな参考になります。

しかし実務では、設備が長年使われているうちに、部品が交換されていたり、現場で追加工されていたり、配線や配管が変更されていたりすることがあります。

そのため、図面上では取付スペースがあるように見えても、実際には別の部品が付いていることがあります。

設計時には、

図面と現物に違いはないか
後から追加された部品はないか
配線や配管のルートは変わっていないか
現場で加工された跡はないか

を確認します。

既設設備の改造では、図面情報と現物確認をセットで考えることが大切です。


現物確認で見るべきポイント

現地改造部品では、現物確認が非常に重要です。

ただ寸法を測るだけではなく、実際に取り付けるときの状態を想像しながら確認します。

見るべきポイントは、

取付面の状態
ボルトを入れるスペース
工具を使うスペース
周辺部品とのすき間
可動部の動作範囲
配線・配管の位置
作業者が手を入れられるか
メンテナンス時に外せるか

などです。

特に、写真だけでは奥行きや工具スペースが分かりにくい場合があります。

可能であれば、取付予定部の正面だけでなく、横、上、下、斜めからも確認しておくと設計しやすくなります。

現地改造では、寸法だけでなく、作業環境を見ることが重要です。


採寸には誤差がある前提で考える

現地採寸では、どうしても誤差が出ます。

設備の奥まった場所では、ノギスが入らなかったり、スケールでおおよそ測るしかなかったりします。

また、塗装面、溶接ビード、黒皮面、歪んだフレームなどを基準に測ると、寸法が安定しない場合があります。

そのため、現地改造部品では、採寸寸法をそのままぴったり設計に使うと、組み付かないことがあります。

設計時には、

どの寸法が正確に測れているか
どの寸法はおおよそか
どこに誤差が出やすいか
調整代や逃げを持たせる必要があるか

を考えます。

現地改造では、採寸寸法を絶対値として扱うのではなく、誤差を見込んだ設計にすることが大切です。


調整代を持たせる

既設設備に部品を追加する場合、調整代を持たせることが多くあります。

現場寸法には誤差があり、既設設備にも歪みやばらつきがあるためです。

よく使う方法としては、

長穴にする
シムで高さ調整する
ブラケットを分割する
ジャッキボルトで位置調整する
現物合わせで穴加工する

などがあります。

ただし、何でも長穴にすればよいわけではありません。

長穴を多くしすぎると、位置が決まりにくくなります。

設計時には、

どの方向に調整が必要か
調整量はどれくらい必要か
調整後にしっかり固定できるか
基準になる面や穴はあるか

を確認します。

調整代は、逃げではなく、現場で正しく組み付けるための設計です。


取付スペースと工具スペースを確認する

現地改造でよくある失敗が、部品は入るが工具が入らないという問題です。

CAD上では部品が干渉していなくても、実際にはボルトを入れる手や、六角レンチ、スパナ、ドリルなどの工具スペースが必要です。

特に既設設備では、周辺部品を簡単に外せないことがあります。

設計時には、

ボルトをどの方向から入れるか
工具を回すスペースはあるか
作業者の手が入るか
現場で穴加工する場合、ドリルが入るか
溶接や切断作業ができるか

を確認します。

現地改造部品は、設計できることよりも、現場で施工できることが重要です。


可動部との干渉を確認する

既設設備には、シリンダ、コンベヤ、スライド、扉、昇降部、回転部などの可動部があります。

改造部品を追加するときは、停止状態だけでなく、動作中の干渉を確認する必要があります。

静止状態では十分なすき間があっても、動作中に近づく部品があるかもしれません。

また、ワークの通過範囲や作業者の動線も確認が必要です。

設計時には、

可動部の最大位置と最小位置を確認したか
動作中に追加部品へ当たらないか
ワークの通過を邪魔しないか
扉やカバーの開閉範囲に入っていないか

を確認します。

現地改造では、止まっている状態だけを見るのではなく、動いた状態を想像することが大切です。


配線・配管の逃げを考える

既設設備の改造では、配線や配管との干渉もよく起こります。

現場では、後から追加されたエア配管、センサーケーブル、電線管、結束バンド、ホースなどがあることがあります。

図面には載っていない場合も多いです。

部品を取り付けた結果、配管を押してしまったり、配線を挟んだりすると、トラブルにつながります。

設計時には、

配線や配管のルートは確認したか
追加部品で押さえ込まないか
可動部に配線が近づかないか
メンテナンス時に配線を外しやすいか
追加するセンサーやシリンダの配線・配管ルートはあるか

を確認します。

現地改造では、機械部品だけでなく、配線・配管まで含めて見ることが重要です。


現地施工のしやすさを考える

現地改造部品は、加工工場で作って終わりではありません。

最終的には現場で取り付けます。

そのため、現地施工のしやすさを考えることが大切です。

たとえば、

大きすぎて装置内に入らない
重すぎて一人で持てない
既設部品を外さないと取り付かない
現場穴加工が難しい
仮固定しにくい
調整中に部品が落ちやすい

このような問題があると、取り付け作業に時間がかかります。

設計時には、

分割して持ち込めるか
仮止めできる構造か
取付順序に無理はないか
作業者が安全に取り付けられるか

を確認します。

現地改造では、製作性だけでなく、施工性も設計の一部です。


初心者が確認したいポイント

現地改造部品を設計するときは、次の内容を確認するとよいです。

  • 既設図面と現物に違いはないか
  • 取付面の状態は確認したか
  • 採寸寸法に誤差が出やすい場所はないか
  • 調整代は必要か
  • 長穴やシムを使う方向は合っているか
  • ボルトや工具を入れるスペースはあるか
  • 現場穴加工や溶接ができるか
  • 可動部の動作範囲と干渉しないか
  • ワークの通過を邪魔しないか
  • 配線や配管を押さえ込まないか
  • 現地で安全に取り付けられるか
  • メンテナンス時に外せるか

現地改造では、図面上の寸法だけでなく、現場での作業性を確認することが大切です。


まとめ

現地改造部品の設計では、既設設備に合わせる力が求められます。

新規設計と違い、すでにある設備、配線、配管、可動部、作業スペースの中に部品を追加する必要があります。

そのため、

現物確認
採寸誤差
調整代
取付スペース
工具スペース
可動部との干渉
配線・配管の逃げ
現地施工性

を考える必要があります。

良い現地改造設計とは、CAD上で取り付く設計ではありません。

現場で無理なく取り付き、調整でき、安全に使える設計
です。

初心者のうちは、現地改造部品を設計するときに、
この部品は現場で本当に取り付けられるか、工具は入るか、調整代はあるか
を確認する習慣を持つとよいです。

次回は、
「良い部品設計に共通する考え方」
について解説します。