はじめに
機械装置設計では、
どこまで自動化するか
を考える場面がよくあります。
たとえば、
- ワーク投入を作業者が行うのか
- 自動供給機を使うのか
- 位置決めだけ自動にするのか
- クランプまで自動にするのか
- 排出まで自動にするのか
- 検査や確認も自動化するのか
といった判断です。
初心者のうちは、
「自動化できるなら、できるだけ自動化した方がよい」
と考えてしまうことがあります。
しかし実務では、すべてを自動化すればよいわけではありません。
自動化すると、作業は楽になる反面、装置が大きくなったり、機構が複雑になったり、コストが上がったりします。
また、ワークのばらつきが大きい場合や、生産数が少ない場合は、手作業を残した方が現実的なこともあります。
今回は、装置設計で重要な
「手作業と自動化の境界を考える」
というテーマについて解説します。
自動化の目的をはっきりさせる
まず大切なのは、
何のために自動化するのか
をはっきりさせることです。
自動化の目的には、いろいろあります。
- 作業者の負担を減らす
- 作業時間を短縮する
- 品質を安定させる
- 作業ミスを減らす
- 危険作業をなくす
- 人手不足に対応する
- 生産数を増やす
目的がはっきりしていないと、必要以上に複雑な装置になってしまうことがあります。
たとえば、作業者の負担を減らしたいだけであれば、完全自動化しなくても、ワークの位置決めやクランプだけを自動化すれば十分な場合があります。
品質を安定させたいのであれば、搬送まで自動化するよりも、位置決め精度や押し付け力の安定を優先した方が効果的な場合もあります。
設計の最初に、
何を改善するための自動化なのか
を整理することが大切です。
手作業を残した方がよい場合
装置設計では、あえて手作業を残す判断もあります。
手作業には、人の判断や柔軟さを活かせるという利点があります。
たとえば、
- ワークの種類が多い
- ワーク形状にばらつきが大きい
- 生産数が少ない
- 段取り替えが多い
- 目視確認が必要
- 初期投資を抑えたい
- 作業者が簡単に対応できる
このような場合は、すべてを自動化するよりも、手作業を残した方が使いやすいことがあります。
たとえば、ワーク投入だけは作業者が行い、位置決めとクランプだけを装置で行う。
検査結果の判断は作業者が行い、押し込み作業だけをシリンダで行う。
段取り替えは手動で行い、加工中の保持だけを自動にする。
このように、手作業と自動化を組み合わせることで、装置をシンプルにできます。
自動化は便利ですが、何でも機械に任せればよいわけではありません。
自動化した方がよい場合
一方で、自動化した方がよい作業もあります。
特に、繰り返し作業、力が必要な作業、危険を伴う作業、品質にばらつきが出やすい作業は、自動化の効果が出やすいです。
たとえば、
- 重いワークを持ち上げる
- 同じ位置へ何度も押し込む
- 一定の力で押さえる
- 高温部や可動部の近くで作業する
- 作業者によって仕上がりが変わる
- 短いサイクルで繰り返す
- 人が入りにくい場所で作業する
このような作業は、自動化を検討する価値があります。
たとえば、毎回同じ位置で押し込む作業は、エアシリンダやサーボプレスを使うことで安定しやすくなります。
重いワークを持ち上げる作業は、リフタやバランサーを使うことで作業者の負担を減らせます。
危険な場所に手を入れる作業は、機構や治具で置き換えることで安全性を高められます。
自動化は、単に人を減らすためだけではありません。
安全性と品質を安定させるための手段
でもあります。
部分自動化という考え方
実務では、完全自動化よりも、部分自動化の方が現実的なことが多くあります。
部分自動化とは、作業の一部だけを機械化する考え方です。
たとえば、
- ワーク投入は手作業
- ワーク有無確認はセンサー
- 位置決めは治具
- クランプはエアシリンダ
- 押し込みは自動
- 取り出しは手作業
というような形です。
このように分けると、装置を大きくしすぎずに、作業の負担やミスを減らせます。
特に少量多品種の現場では、完全自動化よりも、作業者が関わる余地を残した方が使いやすい場合があります。
部分自動化を考えるときは、
人が得意な作業
機械が得意な作業
を分けて考えます。
人は、目視確認、柔軟な判断、段取り替え、異常対応が得意です。
機械は、繰り返し動作、一定の力、一定の位置、危険作業の代替が得意です。
この役割分担を考えると、無理のない装置構想になりやすくなります。
自動化すると増えるもの
自動化にはメリットがありますが、同時に増えるものもあります。
たとえば、
- シリンダやモーター
- センサー
- 電磁弁
- 配線・配管
- 制御プログラム
- 安全カバー
- インターロック
- 調整箇所
- メンテナンス部品
- トラブル要因
です。
手作業では不要だった確認や安全対策が、自動化すると必要になることがあります。
たとえば、クランプを自動化するなら、クランプ完了確認が必要になるかもしれません。
押し込み動作を自動化するなら、前進端や後退端の確認、異常時の停止、安全カバーが必要になるかもしれません。
搬送を自動化するなら、ワーク詰まりや排出確認も考える必要があります。
自動化は、機械が勝手にやってくれる便利な仕組みである一方、
確認する項目や管理する部品が増える
ということも理解しておく必要があります。
費用対効果を考える
自動化を考えるときは、費用対効果も重要です。
どれだけ便利な装置でも、投資に見合わなければ採用しにくくなります。
費用対効果を見るときは、単に装置価格だけを見るのではなく、次のような点も考えます。
- 作業時間をどれだけ短縮できるか
- 作業者の負担をどれだけ減らせるか
- 不良や手直しを減らせるか
- 安全リスクを減らせるか
- 何年くらい使う装置か
- 生産数はどれくらいあるか
- 品種変更に対応できるか
たとえば、毎日何千回も繰り返す作業であれば、自動化の効果は大きくなります。
逆に、月に数回しか使わない作業であれば、簡単な治具や手動機構で十分な場合もあります。
装置設計では、
自動化できるか
だけでなく、
自動化する価値があるか
を考えることが大切です。
作業者の動きを楽にする
自動化と聞くと、人の作業を完全になくすことをイメージしがちです。
しかし実務では、作業者の動きを少し楽にするだけでも、大きな効果があります。
たとえば、
- ワークを置くだけで位置が決まる
- 重い部品を持たなくてよい
- ボタン操作でクランプできる
- センサーでセットミスを防げる
- 取り出しやすい位置へワークが出てくる
- 左右や表裏を間違えにくい形にする
こうした改善も立派な自動化の一部です。
装置設計では、
人の作業をなくす
だけでなく、
人が無理なく作業できるようにする
という視点が大切です。
完全自動化を目指さなくても、作業者の負担やミスを減らす設計は十分に価値があります。
初心者が確認したいポイント
手作業と自動化の境界を考えるときは、次の内容を確認するとよいです。
- 何のために自動化するのか
- 作業者の負担を減らしたいのか
- 品質を安定させたいのか
- 危険作業をなくしたいのか
- 生産数はどれくらいか
- ワークの種類やばらつきは多いか
- 手作業を残した方が柔軟に対応できないか
- 部分自動化で十分ではないか
- 自動化によってセンサーや安全対策が増えないか
- メンテナンスや調整が難しくならないか
- 投資に見合う効果があるか
自動化は目的ではなく、課題を解決するための手段です。
まとめ
装置設計では、手作業と自動化の境界を考えることが重要です。
すべてを自動化すればよいわけではありません。
ワークの種類、生産数、作業内容、安全性、品質、コスト、メンテナンス性を考えながら、どこまで機械に任せるかを決める必要があります。
自動化を考えるときは、
何のために自動化するのか
手作業を残す方がよい部分はないか
機械化した方がよい作業はどこか
部分自動化で十分ではないか
自動化によって増える要素は何か
費用対効果は合うか
を整理します。
良い装置設計とは、ただ人の作業を減らす設計ではありません。
人が得意な作業と、機械が得意な作業を分け、無理なく安定して使える装置にすること
です。
初心者のうちは、すぐに完全自動化を考えるのではなく、
どの作業を自動化すれば一番効果があるか
を考える習慣を持つとよいです。
次回は、
「装置レイアウトの基本」
について解説します。
