はじめに
機械装置設計では、部品の形や機構を考える前に、装置がどの順番で動くのかを整理することが大切です。
この動きの順番をまとめたものが、動作フローです。
たとえば、簡単な組立装置でも、
- ワークを投入する
- ワークを検出する
- ワークを位置決めする
- ワークをクランプする
- 部品を組み付ける
- 組付け完了を確認する
- クランプを解除する
- ワークを排出する
というような流れがあります。
装置設計では、この流れを先に整理しておかないと、必要なシリンダやセンサーが抜けたり、動作の順番に無理が出たりします。
今回は、機械設計初心者向けに、
「動作フローを作る考え方」
について解説します。
動作フローは装置の設計図の土台
動作フローは、装置全体の動きを整理するための土台です。
CADで形状を作る前に、装置がどのように動くのかを言葉で整理します。
たとえば、
- 最初に何をするのか
- 次にどの部品が動くのか
- どのタイミングでセンサー確認するのか
- どの状態になったら次へ進むのか
- 異常時にはどこで止めるのか
を考えます。
動作フローがあいまいなまま設計すると、後から制御担当者に確認されたときに説明できないことがあります。
また、動作の順番が決まっていないと、機構の配置も決めにくくなります。
装置設計では、
動作を整理してから形を考える
という順番が大切です。
まず「開始」と「完了」を決める
動作フローを作るときは、まず装置の開始状態と完了状態を決めます。
開始状態とは、装置が動き始める前の状態です。
たとえば、
- ワークが投入されている
- シリンダが原位置に戻っている
- カバーが閉じている
- 非常停止が解除されている
- スタートボタンが押される
などです。
完了状態とは、1サイクルが終わった状態です。
たとえば、
- ワークの加工が完了している
- 組付けが完了している
- ワークが排出されている
- シリンダが原位置に戻っている
- 次のワークを投入できる状態になっている
などです。
開始と完了が決まると、その間に必要な動作を順番に並べやすくなります。
装置設計では、最初に
どの状態から始まり、どの状態になれば完了なのか
を明確にすることが大切です。
1サイクルの流れを書き出す
開始と完了が決まったら、1サイクルの流れを書き出します。
ここでは、細かい部品形状ではなく、装置の動きを順番に整理します。
たとえば、ワークを押し込む装置であれば、
- 作業者がワークをセットする
- ワーク有無センサーが確認する
- 作業者がスタートボタンを押す
- クランプシリンダがワークを押さえる
- 押込みシリンダが前進する
- 前進端センサーで完了を確認する
- 押込みシリンダが後退する
- クランプシリンダが解除する
- 作業者がワークを取り出す
という流れになります。
このように動きを書き出すと、必要な機構やセンサーが見えてきます。
また、動作の順番に無理がないかも確認しやすくなります。
最初からきれいな表にする必要はありません。
まずは紙やメモに、投入から排出までの流れを書き出すだけでも十分です。
たとえば、押込み装置の1サイクルを図にすると、下図のようになります。
文章で整理した動作を、順番に見える形へ置き換えると理解しやすくなります。

「確認してから動く」を意識する
装置の動作フローでは、ただ順番に動かすだけでは不十分です。
大切なのは、確認してから次の動作へ進むことです。
たとえば、
- ワークがあることを確認してからクランプする
- クランプ完了を確認してから押し込む
- シリンダが戻ったことを確認してからワークを取り出す
- カバーが閉まっていることを確認してから動作する
- 排出完了を確認してから次サイクルへ進む
という考え方です。
確認がないまま動作すると、ワークがないのにシリンダが動いたり、クランプしていないのに加工したりする可能性があります。
これは、装置不良やワーク破損だけでなく、安全上の問題にもつながります。
動作フローを作るときは、各動作の前後に、
何を確認する必要があるか
を入れて考えることが大切です。
原位置を考える
動作フローでは、各機構の原位置も重要です。
原位置とは、装置が待機しているときの基本位置です。
たとえば、
- シリンダは後退端にいる
- クランプは開いている
- 昇降ユニットは上昇端にいる
- ストッパは下がっている
- 回転テーブルは基準位置にいる
といった状態です。
原位置が決まっていないと、装置の開始条件があいまいになります。
また、電源投入時や非常停止後の復帰動作も考えにくくなります。
設計時には、
各シリンダやユニットは待機時にどこにいるか
その位置はセンサーで確認できるか
原位置に戻る動作に危険はないか
を確認します。
原位置は、動作フローを安定させるための基準です。
人の作業を動作フローに入れる
動作フローを作るときは、機械の動きだけでなく、人の作業も入れて考えます。
たとえば、
- 作業者がワークをセットする
- 作業者が部品を置く
- 作業者がスタートボタンを押す
- 作業者が完成品を取り出す
- 作業者が異常時に確認する
といった作業です。
人の作業を入れずに機械動作だけで考えると、現場で使いにくい装置になることがあります。
たとえば、作業者がワークをセットする前にクランプが閉じる。
ワークを取り出す前に次の動作が始まる。
手を入れる場所にシリンダが動く。
このような問題は、動作フローに人の作業を入れておくことで気づきやすくなります。
装置設計では、機械の動きと作業者の動きをセットで考えることが大切です。
センサーの役割が見えてくる
動作フローを作ると、センサーの役割も見えてきます。
センサーは、ただ多く付ければよいわけではありません。
何を確認するために必要なのかを明確にすることが大切です。
たとえば、
- ワークがあるか確認するセンサー
- ワークが正しい位置にあるか確認するセンサー
- シリンダの前進端・後退端を確認するセンサー
- カバーが閉まっているか確認するセンサー
- 排出されたか確認するセンサー
- 異常な詰まりを検出するセンサー
などです。
動作フローの中で、
次の動作に進むために何を確認するか
を考えると、必要なセンサーを整理しやすくなります。
逆に、動作に関係しないセンサーを付けても、調整箇所やトラブル要因が増えることがあります。
センサーは、動作フローとセットで考えると分かりやすくなります。
異常時の動きも考える
動作フローでは、正常時の流れだけでなく、異常時の動きも考える必要があります。
たとえば、
- ワークがない
- ワークが正しい位置にない
- シリンダが前進端まで行かない
- 排出されない
- カバーが開いている
- 非常停止が押された
- エア圧が不足している
このような場合に、装置をどう止めるかを考えます。
異常時の考え方がないと、装置が途中状態で止まり、復帰方法が分かりにくくなることがあります。
設計時には、
どこで異常を検出するか
異常時にどの動作を止めるか
ワークや機械を壊さず止まれるか
復帰するときに危険はないか
を確認します。
正常に動くことだけでなく、異常時に安全に止まれることも装置設計では重要です。
初心者が確認したいポイント
動作フローを作るときは、次の内容を確認するとよいです。
- 装置の開始状態は決まっているか
- 1サイクルの完了状態は明確か
- 投入から排出までの流れを書き出したか
- 各動作の前に必要な確認はあるか
- 原位置は決まっているか
- 人の作業もフローに入っているか
- センサーの役割は明確か
- 異常時にどこで止めるか考えているか
- 非常停止後の復帰を考えているか
- 次工程へ渡す状態は明確か
動作フローは、装置の動きを整理するための重要な資料です。
まとめ
動作フローは、装置設計の土台になる考え方です。
部品や機構を詳しく描く前に、装置がどの順番で動くのかを整理することで、必要な機構やセンサー、安全対策が見えやすくなります。
動作フローを作るときは、
開始状態
完了状態
1サイクルの流れ
確認してから動く考え方
原位置
人の作業
センサーの役割
異常時の動き
を整理します。
良い装置設計とは、ただ機構が動く設計ではありません。
必要な確認をしながら、正しい順番で、安全に動く設計
です。
初心者のうちは、装置の形を考える前に、まず
ワーク投入から排出までの流れ
を文章で書き出すことをおすすめします。
次回は、
「手作業と自動化の境界を考える」
について解説します。
