はじめに
機械装置設計では、フレームやシリンダ、センサーなどを考える前に、まずワークを見ることが大切です。
ワークとは、その装置で扱う対象物のことです。
たとえば、搬送する部品、組み付ける部品、穴あけする部品、検査する製品などです。
装置は、基本的にワークに合わせて設計します。
ワークの形状、重さ、材質、姿勢、基準面、ばらつき、傷の付きやすさによって、装置の構造は大きく変わります。
初心者のうちは、
「ここにシリンダを置こう」
「ここにセンサーを付けよう」
「この位置にコンベヤを入れよう」
というように、機械部品から考えてしまうことがあります。
しかし、ワークの扱い方が決まっていない状態で機構を考えると、後から大きな修正になることがあります。
今回は、装置設計で重要な
「ワークを基準に装置を考える」
という考え方について解説します。
装置はワークを扱うためにある
装置設計でまず意識したいのは、装置はワークを扱うためにあるということです。
装置の目的は、シリンダやモーターを動かすことではありません。
大切なのは、
- ワークを決まった位置に置く
- ワークを安定して搬送する
- ワークを正しい姿勢で保持する
- ワークに加工や組付けを行う
- ワークを傷付けずに排出する
ということです。
たとえば、シリンダで押す装置を考える場合でも、重要なのはシリンダそのものではありません。
どのワークを、どの位置で、どの方向に、どれくらいの力で押すのか
が重要です。
コンベヤを使う場合も同じです。
コンベヤを置くことが目的ではなく、ワークを安定して搬送することが目的です。
装置設計では、機構からではなく、まずワークから考えることが基本です。
ワークの形状と姿勢を確認する
ワークを基準に装置を考えるためには、まずワークの形状をよく見る必要があります。
確認したいのは、次のような内容です。
- ワークは四角い形か、丸い形か
- 底面は安定しているか
- 穴や突起はあるか
- 薄くてたわみやすいか
- 左右や表裏を間違えやすい形か
- 傷を付けてはいけない面はあるか
たとえば、平らな底面があるワークであれば、下から受けやすくなります。
穴があるワークであれば、ピンで位置決めできる場合があります。
丸物であれば、Vブロックやローラーで受ける方法も考えられます。
また、ワークをどの姿勢で扱うかも重要です。
寝かせて置くのか。
立てて置くのか。
横向きで押すのか。
上下反転させる必要があるのか。
姿勢によって、位置決め、クランプ、搬送、排出の方法が変わります。
ワークの形状と姿勢は、装置構想の出発点です。
ワークの基準面を決める
装置設計では、ワークのどこを基準にするかが非常に重要です。
基準面とは、ワークの位置や姿勢を決めるための面や穴のことです。
たとえば、
- 底面で高さを決める
- 側面で左右位置を決める
- 穴で位置を決める
- 端面をストッパに当てる
- 加工済み面を基準にする
といった考え方があります。
基準があいまいだと、ワークの位置が毎回変わります。
位置が変わると、センサーの検出位置、シリンダの押し位置、加工位置、組付け位置も安定しません。
注意したいのは、ばらつきの大きい面を基準にしてしまうことです。
たとえば、溶接面、曲げ面、バリが出やすい切断面、ゴムや樹脂の変形しやすい面は、基準として不安定な場合があります。
ワークの基準を決めるときは、
どの面が安定しているか
どの面を基準にすれば次工程が安定するか
ばらつきの影響を受けにくいか
を確認します。
装置側の治具やガイドは、このワーク基準に合わせて設計します。
ワークのばらつきを考える
装置設計では、ワークが図面寸法どおりに完全にそろっているとは考えない方がよいです。
実際のワークには、必ずばらつきがあります。
たとえば、
- 外形寸法のばらつき
- 穴位置のばらつき
- 板厚のばらつき
- 曲げ角度のばらつき
- 反りやねじれ
- バリ
- 表面処理の厚み
- 溶接ひずみ
などです。
ワークのばらつきを考えずに、ぴったりした治具やガイドを作ると、ワークが入らない、動きが重い、引っかかる、位置が安定しないといった問題が起こります。
ここで大切なのは、
基準にする場所と、逃がす場所を分けること
です。
すべての面をきつく当てると、ばらつきの逃げ場がなくなります。
位置を決めたい面はしっかり当てる。
ばらつきが出る部分には逃げやすき間を持たせる。
この考え方が、現場で使いやすい装置につながります。
ワークをどこで受けるか
ワークを装置に置く場合、どこで受けるかを考えます。
受ける位置が悪いと、ワークが傾いたり、たわんだり、傷が付いたりします。
たとえば、薄い板物を端だけで受けると、中央が下がることがあります。
重いワークを小さな面で受けると、受け部が摩耗したり、ワークに打痕が付いたりすることがあります。
設計時には、
ワークはどこで安定して受けられるか
受け面で傷が付かないか
ワークが傾かないか
ゴミやバリで浮かないか
受け部は摩耗したら交換できるか
を確認します。
外観面や塗装面、樹脂部品などでは、樹脂材やゴム材で受けることもあります。
ワークを正しく扱うためには、まず安定して受けることが重要です。
傷を付けない工夫をする
装置でワークを扱うときは、傷防止も重要です。
特に、外観部品、樹脂部品、アルミ部品、塗装品、メッキ品などでは注意が必要です。
傷が付く原因には、
- 金属の角が当たる
- ワークを強く押さえすぎる
- 搬送中にこすれる
- 切粉やゴミをかみ込む
- ワーク同士が接触する
などがあります。
対策としては、
接触部に面取りやRを入れる
樹脂やゴムの当て部品を使う
ワークを無理にこすらない
ゴミがたまりにくい形にする
摩耗部を交換式にする
といった方法があります。
装置としては、ワークを動かせればよいのではありません。
ワークを正しい状態で、次工程へ渡すことが大切です。
センサーはワークのどこを見るか
装置では、センサーでワークの有無や位置を確認することがあります。
たとえば、
- ワークが投入されたか
- 正しい位置にあるか
- 浮いていないか
- 向きが正しいか
- 排出されたか
といった確認です。
センサー位置を考えるときも、ワークが基準になります。
ワークのどの面を見るのか。
ばらつきがあっても検出できるのか。
汚れや色の影響を受けないか。
調整や交換ができる位置か。
これらを考えずにセンサーを配置すると、現場で検出不良が起こることがあります。
センサーは、ただ付いていればよいわけではありません。
何を確認するためのセンサーなのか
を明確にして配置することが大切です。
初心者が確認したいポイント
ワークを基準に装置を考えるときは、次の内容を確認するとよいです。
- ワークの形状を確認したか
- ワークの重量や材質を把握しているか
- どの面を基準にするか決めているか
- ワークの姿勢は安定しているか
- ばらつきや反りを考えているか
- ワークをどこで受けるか決めているか
- 傷を付けてはいけない面を確認したか
- 位置決めと逃げを分けて考えているか
- 搬送方向は決まっているか
- センサーでどこを検出するか決まっているか
- 前後工程とのつながりを考えているか
ワークをよく見てから装置を考えることで、設計の手戻りを減らしやすくなります。
まとめ
装置設計では、ワークを基準に考えることが大切です。
装置は、シリンダやモーターを動かすためにあるのではなく、ワークを正しく扱うためにあります。
そのため、
ワーク形状
基準面
姿勢
ばらつき
受け方
傷防止
センサー検出
を最初に整理する必要があります。
良い装置設計とは、ワークが自然に正しい位置へ入り、安定して動作し、傷付かず、次工程へ渡せる設計です。
初心者のうちは、装置の機構を考える前に、まずワークを見て、
どこを基準にするか
どう置くか
どう動かすか
を書き出すことをおすすめします。
次回は、
「動作フローを作る考え方」
について解説します。
