はじめに
機械装置設計では、装置を動かすことだけでなく、メンテナンスしやすい構造にすることも大切です。
装置は、納品して終わりではありません。
実際の現場では、長く使う中で、
- センサーの調整
- シリンダの交換
- ベルトやチェーンの張り調整
- ガイドや軸受の給油
- カバーの取り外し
- ワーク受けやパッドの交換
- 切粉や粉じんの清掃
- トラブル時の復旧作業
などが発生します。
メンテナンスしにくい装置は、故障時の復旧に時間がかかります。
また、点検や清掃がやりにくいと、不具合を早めに見つけにくくなります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「メンテナンスしやすい装置設計」
について解説します。
メンテナンスする部品を最初に考える
メンテナンス性を考えるときは、まず
後から触る部品はどこか
を整理します。
装置の中には、一度組み付けたらほとんど触らない部品もあります。
一方で、定期的に点検・調整・交換する部品もあります。
たとえば、
- センサー
- エアシリンダ
- スピードコントローラ
- ベルト
- チェーン
- ローラー
- ガイド
- 軸受
- フィルタ
- パッド
- シール
- ワーク受け
- ストッパ
などは、あとから触る可能性があります。
設計時には、
どの部品を点検するか
どの部品を調整するか
どの部品が摩耗するか
どの部品を交換する可能性があるか
を確認します。
メンテナンスしやすい装置は、最初から「後で触る場所」を考えて作られています。
工具が入るスペースを確保する
メンテナンス性でよく問題になるのが、工具スペースです。
CAD上では部品が取り付いていても、実際には工具が入らず、ボルトを緩められないことがあります。
たとえば、
- 六角レンチが入らない
- スパナを回せない
- ドライバーが届かない
- センサー固定ねじを緩めにくい
- カバーを外さないと調整できない
といった問題です。
設計時には、
どの工具で作業するか
工具を差し込む方向はあるか
工具を回すスペースはあるか
部品を外す順番に無理はないか
を確認します。
取り付けられることと、外せることは別です。
メンテナンスしやすい設計では、組立時だけでなく、交換や調整時の工具スペースまで考えます。
カバーは外しやすく、戻しやすくする
安全カバーや点検カバーは、メンテナンス時に外すことがあります。
このとき、カバーを外すのに時間がかかると、点検や清掃が面倒になります。
また、外したカバーが重すぎたり、大きすぎたりすると、作業者の負担になります。
設計時には、
カバーはどの方向に外すか
ボルト本数は多すぎないか
一人で持てる重さか
外したカバーを置く場所に困らないか
戻すときに位置合わせしやすいか
を確認します。
頻繁に開ける場所であれば、蝶番付きの扉や、ノブ付きの固定方法を検討することもあります。
一方で、安全上簡単に外せてはいけないカバーもあります。
カバーは、使用頻度と安全性を考えて、外しやすさを決めることが大切です。
消耗部品は交換しやすくする
装置には、使っているうちに摩耗する部品があります。
たとえば、
- ワーク受け
- 樹脂ガイド
- ゴムパッド
- ウレタンローラー
- シール材
- ストッパ当て
- ベルト
- チェーン
- 吸着パッド
などです。
これらの消耗部品は、いずれ交換が必要になります。
消耗部品が装置の奥にあったり、大きなユニットを外さないと交換できなかったりすると、復旧に時間がかかります。
設計時には、
摩耗する部分だけ交換できるか
標準品で手配できるか
交換時に位置がずれにくいか
交換後に再調整が必要か
交換作業に危険はないか
を確認します。
消耗部品は、最初から交換する前提で設計しておくと、現場で使いやすい装置になります。
調整しやすい構造にする
装置では、使いながら調整が必要になる部分があります。
たとえば、
- センサー位置
- ストッパ位置
- ベルトやチェーンの張り
- ガイドすき間
- エアシリンダの速度
- ワーク押さえ位置
- 高さや水平
などです。
調整部が奥まった場所にあると、作業しにくくなります。
また、調整方向が分かりにくいと、現場で時間がかかります。
設計時には、
どこを調整する必要があるか
調整方向は合っているか
調整ねじや長穴に工具が入るか
調整後にしっかり固定できるか
調整目盛や基準が必要か
を確認します。
調整しやすい装置は、立ち上げ時やトラブル対応時の時間を減らしやすくなります。
清掃しやすい形にする
現場では、装置に汚れがたまります。
切粉、粉じん、油、接着剤、ワークのかけら、ゴム粉など、扱うものによって汚れ方は変わります。
汚れがたまると、
- ワークが浮く
- センサーが誤検出する
- ガイドが動きにくくなる
- ベルトやローラーが摩耗する
- 外観不良の原因になる
といった問題が起こります。
設計時には、
ゴミがたまりやすい水平面はないか
受け面や基準面を拭き取りやすいか
切粉や粉じんを逃がす形になっているか
カバーを外さずに清掃できるか
清掃時に手を切るような角はないか
を確認します。
清掃しやすい構造は、不具合の予防にもつながります。
メンテナンス性を考えるうえで、清掃性は重要なポイントです。
トラブル時に復旧しやすくする
装置は、常に正常に動くとは限りません。
ワーク詰まり、センサー異常、エア圧低下、部品破損、位置ずれなどが起こることがあります。
そのときに、復旧しやすい構造になっているかも重要です。
設計時には、
異常時にワークを取り出せるか
途中停止したシリンダを安全に戻せるか
カバーを開けて状態を確認できるか
詰まりやすい場所に手が届くか
復旧後に原位置へ戻しやすいか
を確認します。
特に自動機では、途中状態で止まったときのことを考えておく必要があります。
正常動作だけでなく、異常停止時の復旧作業まで考えると、現場で扱いやすい装置になります。
メンテナンスしやすい装置設計チェックリスト
メンテナンス性を考えるときは、次の内容を確認するとよいです。
1. 点検・交換部品
- 後から触る部品を整理している
- センサーを調整・交換できる
- シリンダやエア機器を交換できる
- ベルト・チェーン・ローラーを点検できる
- 消耗部品だけを交換できる
2. 工具スペース
- ボルトを緩める工具が入る
- 工具を回すスペースがある
- 部品を外す方向に余裕がある
- 交換時に周辺部品を外しすぎなくてよい
3. カバー・調整
- カバーを外しやすい
- 頻繁に開ける場所は開閉しやすい
- 調整部に手や工具が届く
- 調整方向が分かりやすい
- 調整後にしっかり固定できる
4. 清掃性
- ゴミや油がたまりにくい
- 基準面や受け面を拭き取りやすい
- 切粉や粉じんを逃がしやすい
- 清掃時に危険な角や突起がない
5. 異常復旧
- ワーク詰まりを確認できる
- 異常時にワークを取り出せる
- 途中停止した機構を安全に戻せる
- 復旧後に原位置へ戻しやすい
- メンテナンス時に安全を確保できる
まとめ
メンテナンスしやすい装置設計は、現場で長く安定して使うために重要です。
装置は、正常に動くことだけでなく、点検、調整、清掃、交換、異常復旧がしやすいことも大切です。
メンテナンス性を考えるときは、
後から触る部品
工具スペース
カバーの外しやすさ
消耗部品の交換性
調整しやすさ
清掃性
トラブル時の復旧性
を整理します。
良い装置設計とは、壊れにくいだけの装置ではありません。
不具合が起きたときに原因を確認しやすく、調整や交換がしやすく、短時間で復旧できる装置
です。
初心者のうちは、装置を設計するときに、まず
この部品は後から交換できるか、工具は入るか、清掃できるか
を確認することをおすすめします。
次回は、
「制御・電気設計者に伝わる機械設計」
について解説します。
