はじめに
機械装置設計では、動作や精度、コストと同じくらい安全設計が重要です。
装置は、ワークを加工したり、搬送したり、組み付けたりするために作ります。
しかし、その動作の中には、作業者にとって危険になる部分があります。
たとえば、
- シリンダで押す部分
- 昇降するユニット
- 回転するローラーやチェーン
- 開閉するカバーや扉
- ワークをクランプする部分
- 重い部品が落下する可能性のある部分
などです。
安全設計は、最後にカバーを付ければよいというものではありません。
構想設計の段階から、
どこが危険か、どうすれば人が危険部に触れにくくなるか
を考える必要があります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「安全設計で最初に考えること」
について解説します。
まず危険源を見つける
安全設計で最初に行うことは、危険源を見つけることです。
危険源とは、作業者がけがをする可能性のある場所や動作のことです。
機械装置では、次のような部分が危険源になりやすいです。
- 挟まれる部分
- 巻き込まれる部分
- 押される部分
- 切れる部分
- 落下する部分
- 高温になる部分
- 鋭い角やバリがある部分
たとえば、シリンダでワークを押す装置では、ワークと治具の間に指が挟まれる可能性があります。
コンベヤやローラーでは、回転部に手袋や服が巻き込まれる可能性があります。
昇降機構では、エア圧低下や故障時にユニットが下がる危険があります。
設計時には、
どこが動くのか
人がどこに手を入れるのか
挟まれ・巻き込まれ・落下の危険はないか
通常作業だけでなく、段取りや清掃時も安全か
を確認します。
安全設計は、危険源を見つけるところから始まります。
作業者の動きを考える
安全設計では、装置の動きだけでなく、作業者の動きも考える必要があります。
装置がどれだけ安全に作られていても、作業者が手を入れる場所や立つ位置を考えていないと、危険が残ります。
たとえば、
- ワークをセットするときに手を入れる場所
- 完成品を取り出す場所
- ボタンを押す位置
- 異常時に確認する場所
- 清掃や点検でカバーを開ける場所
- 段取り替えで部品を交換する場所
を確認します。
通常動作中はカバーで守られていても、段取り替えやメンテナンス時に危険部へ近づくことがあります。
設計時には、
作業者はどこに立つか
どこからワークを入れるか
どこに手を入れる可能性があるか
異常時にどこを確認するか
清掃や点検時に危険な動作が残らないか
を考えます。
安全設計では、機械だけを見るのではなく、作業者の動きとセットで確認することが大切です。
カバーで危険部に触れにくくする
危険部がある場合、まず考えたいのがカバーです。
カバーは、作業者が可動部や危険部に触れにくくするための基本的な安全対策です。
たとえば、
- チェーンやベルトのカバー
- 回転ローラーのカバー
- シリンダ押込み部のカバー
- 飛散防止カバー
- 昇降部の囲い
- 開閉扉付きの安全カバー
などがあります。
ただし、カバーは付ければよいわけではありません。
開閉しにくいカバー、点検できないカバー、外さないと段取りできないカバーは、現場で使いにくくなります。
場合によっては、作業者がカバーを外したまま使ってしまう原因にもなります。
設計時には、
危険部をきちんと覆えているか
作業に必要な開口は確保できているか
点検や清掃ができるか
カバーを外さなくても調整できるか
開閉時に干渉しないか
を確認します。
安全カバーは、安全性と作業性の両方を考えて設計することが大切です。
インターロックが必要か考える
開閉するカバーや扉がある場合は、インターロックの必要性も考えます。
インターロックとは、扉が開いているときに装置を動かさない、または動作を止めるための仕組みです。
たとえば、作業者が扉を開けた状態でシリンダやモーターが動くと危険な場合があります。
このような場合、扉の開閉を確認するスイッチを付け、扉が閉まっていることを確認してから動作させます。
設計時には、
扉を開けた状態で危険な動作があるか
扉を開ける頻度は多いか
扉を開けたときにどの動作を止めるか
復帰時に急に動かないか
メンテナンス時の操作方法は明確か
を確認します。
インターロックを付ければ安全というわけではありません。
扉を開けたときに何を止めるのか、復帰時にどう再開するのかまで考えることが重要です。
非常停止時の状態を考える
安全設計では、非常停止時に装置がどうなるかも重要です。
非常停止ボタンを押したときに、モーターやシリンダが止まることは当然ですが、そこで安全な状態になるかを確認する必要があります。
たとえば、
- 昇降部が落下しないか
- ワークを保持したまま安全に止まれるか
- 回転体が惰性で回り続けないか
- エアシリンダが残圧で動かないか
- クランプが急に解除されないか
といった点です。
装置によっては、電源やエアを切るだけでは危険な場合があります。
重い昇降部では、ブレーキやメカストッパが必要になることがあります。
ワークを保持している機構では、非常停止時にワークが落下しないように考える必要があります。
設計時には、
非常停止時に何が止まるか
何が保持されるか
落下や惰性運転の危険はないか
復帰時に急に動き出さないか
を確認します。
非常停止は、ただ止めるためではなく、危険を減らすためのものです。
メンテナンス時の安全を考える
装置は、通常運転中だけでなく、メンテナンス時にも安全である必要があります。
実際の現場では、清掃、給油、センサー調整、シリンダ交換、ベルト交換、詰まり除去などで、装置の中に手を入れることがあります。
このときに、可動部が急に動いたり、昇降部が落下したりすると危険です。
設計時には、
メンテナンス時にどこへ手を入れるか
エアや電源を切ったときに安全な状態になるか
昇降部を固定する安全ピンやストッパは必要か
重い部品を安全に外せるか
交換作業中に部品が落ちないか
を確認します。
メンテナンス時は、通常運転時よりもカバーを開けたり、部品を外したりするため、危険が増えることがあります。
安全設計では、装置が動いているときだけでなく、止めて作業するときの安全も考える必要があります。
鋭い角・バリ・突起にも注意する
安全設計というと、大きな可動部やカバーに目が行きがちですが、細かい部分にも注意が必要です。
作業者が触れる部品に鋭い角やバリがあると、手を切る原因になります。
また、通路側に突き出したボルトやブラケットがあると、作業者が引っ掛けることがあります。
設計時には、
作業者が触れる角に面取りがあるか
板金部品の端面で手を切らないか
ボルトやブラケットが通路側に突き出していないか
ケーブルやホースにつまずかないか
を確認します。
大きな危険だけでなく、小さなけがにつながる部分も減らしていくことが大切です。
現場で長く使いやすい装置は、このような細かい安全配慮もできています。
安全設計チェックリスト
安全設計を考えるときは、次の内容を確認するとよいです。
1. 危険源の確認
- 挟まれ箇所を確認している
- 巻き込まれ箇所を確認している
- 落下する可能性のある部分を確認している
- 高温部や鋭利な部分を確認している
- 通常作業だけでなく、段取り・清掃時も確認している
2. 作業者の動き
- 作業者が立つ位置を確認している
- ワーク投入・取出し時の手の位置を確認している
- 異常時に手を入れる場所を確認している
- 清掃や点検時の作業姿勢を考えている
3. カバー・インターロック
- 危険部をカバーで覆えている
- カバーを開けても点検や清掃ができる
- 扉の開閉方向に問題がない
- 必要に応じてインターロックを検討している
- 扉を開けたときに止める動作を決めている
4. 非常停止・異常時
- 非常停止時に安全な状態になる
- 昇降部やワークが落下しない
- 回転体の惰性運転を考えている
- 残圧でシリンダが動かないように考えている
- 復帰時に急に動き出さない
5. メンテナンス・細部
- メンテナンス時に安全に手を入れられる
- 必要に応じて安全ピンやメカストッパを設けている
- 重い部品を安全に交換できる
- 作業者が触れる角に面取りがある
- 通路側に危険な突起がない
まとめ
安全設計は、装置設計で最初から考えるべき重要な要素です。
最後にカバーを追加するだけでは、使いにくい装置になったり、危険が残ったりすることがあります。
安全設計では、
危険源を見つけること
作業者の動きを考えること
カバーで危険部に触れにくくすること
インターロックの必要性を考えること
非常停止時の状態を確認すること
メンテナンス時の安全を考えること
鋭い角や突起を減らすこと
が大切です。
良い安全設計とは、単にカバーが付いている設計ではありません。
作業者が通常作業・段取り・清掃・点検を行う中で、危険部に触れにくく、異常時にも安全に止まれる設計
です。
初心者のうちは、装置を設計するときに、まず
どこが動くのか、どこに手が入るのか、止まったときに安全か
を確認することをおすすめします。
次回は、
「メンテナンスしやすい装置設計」
について解説します。
