はじめに

機械部品には、丸い形状の部品が多くあります。

たとえば、

  • シャフト
  • ピン
  • カラー
  • スペーサ
  • ローラ
  • ブッシュ
  • 軸受まわりの部品
  • 丸ナット
  • 軸端部品

などです。

これらの丸物部品を作るときによく使われる加工が、旋盤加工です。

旋盤加工は、材料を回転させながら工具で削る加工です。

フライス加工が平面や溝、段差を削る加工だとすると、旋盤加工は丸い形状を作るのに向いた加工です。

初心者のうちは、

「丸い部品なら旋盤で簡単に作れる」
「外径と長さを決めればよい」
「段付き形状も問題なく作れる」
「穴や溝も図面に描けば加工できる」

と考えてしまうことがあります。

しかし実務では、旋盤加工にも得意な形状と注意が必要な形状があります。

今回は、機械設計初心者向けに
「旋盤加工で作る部品の基本」
について、設計者目線で解説します。


旋盤加工とは何か

旋盤加工は、材料を回転させ、そこに工具を当てて削る加工です。

丸棒材やパイプ材、円柱状の素材を回転させながら、外径、内径、端面、溝、ねじなどを加工します。

主な加工内容としては、

  • 外径を削る
  • 端面を仕上げる
  • 段付き形状にする
  • 穴をあける
  • 内径を広げる
  • 溝を入れる
  • ねじを切る
  • テーパを加工する

などがあります。

旋盤加工は、回転している材料に工具を当てるため、回転対称の形状に向いています。

つまり、部品を中心軸で回したときに同じ形になるような部品です。

たとえば、シャフト、カラー、スペーサ、ローラなどは、旋盤加工に向いている代表的な部品です。


旋盤加工で作りやすい形状

旋盤加工で作りやすいのは、中心軸に対して回転対称になっている形状です。

たとえば、

  • 外径が一定の丸棒部品
  • 段付きシャフト
  • 円筒カラー
  • スペーサ
  • ローラ
  • 内径のあるブッシュ
  • 端面を仕上げた丸物部品

などです。

これらは、材料を回転させながら外径や端面を削ることで作れます。

設計者が意識したいのは、旋盤加工では「中心軸」が重要になるということです。

外径、内径、端面、段差、溝などは、基本的に中心軸を基準に加工されます。

そのため、図面でも中心軸を意識した寸法の入れ方が必要です。

特に、軸径、段付き部、はめあい部、ベアリングが入る部分などは、中心軸との関係が重要になります。


シャフトは旋盤加工の代表的な部品

旋盤加工でよく作られる部品の代表がシャフトです。

シャフトは、回転を伝えたり、ローラを支えたり、部品のガイドとして使ったりする部品です。

シャフトを設計するときは、単に外径と長さを決めるだけでは不十分です。

たとえば、

  • どこで支持するのか
  • どこにベアリングが入るのか
  • どこにカラーやローラが付くのか
  • どこで抜け止めするのか
  • どこに止め輪やねじを使うのか
  • 回転するのか、固定されるのか
  • 荷重はどこにかかるのか

を考える必要があります。

また、シャフトには段付き形状が多く使われます。

段付きにすることで、部品の位置決めや抜け止め、ベアリングの当たり面を作ることができます。

ただし、段差が多すぎると加工工程が増えます。

また、段差の角部には応力が集中しやすいため、必要に応じてRや逃げを考えることも大切です。


カラーやスペーサは単純に見えて重要

カラーやスペーサは、旋盤加工で作りやすい部品です。

一見すると、ただの円筒形状に見えるかもしれません。

しかし、機械設計では重要な役割を持ちます。

たとえば、

  • 部品同士の間隔を決める
  • ベアリングの位置を決める
  • ローラの位置を決める
  • 締結時の座面を作る
  • 軸方向のズレを防ぐ
  • 高さや隙間を調整する

などです。

カラーやスペーサでは、外径、内径、長さ、端面の直角度、面取りなどを考える必要があります。

特に長さ寸法は、組立寸法に影響することがあります。

カラーが短すぎるとガタが出る。
長すぎると部品が締まりきらない。
端面が荒れていると、相手部品と密着しにくい。

このような問題が起きることがあります。

単純な形状でも、機械の位置決めや組立性に関係する場合は、必要な精度を考えることが大切です。


ローラ部品は外径と軸受部に注意する

ローラも旋盤加工でよく作られる部品です。

搬送装置、ガイド、ワーク受け、押さえ機構などで使われます。

ローラを設計するときは、外径だけでなく、軸受部や取付方法も考える必要があります。

たとえば、

  • ローラ外径
  • ローラ幅
  • 内径
  • ベアリングの有無
  • 軸とのはめあい
  • 表面粗さ
  • 材質
  • 表面処理
  • ワークとの接触面
  • 両端の面取り

などです。

ワークに触れるローラでは、外周面の仕上げが重要になる場合があります。

ワークに傷を付けたくない場合は、材質や表面処理、表面粗さを考える必要があります。

また、ベアリングを圧入する場合は、内径寸法や公差が重要になります。

ローラは丸い部品なので旋盤加工に向いていますが、使用目的によって注意点は変わります。


外径寸法は用途によって精度が変わる

旋盤加工では、外径寸法を削って仕上げます。

ただし、すべての外径に厳しい公差が必要なわけではありません。

たとえば、外観上の外径や、単なる逃げ部の外径であれば、一般公差で十分な場合があります。

一方で、

  • ベアリングが入る軸径
  • 相手部品と組み合う外径
  • 摺動する外径
  • シールが当たる外径
  • ローラとしてワークに接触する外径

などは、必要な精度を考える必要があります。

初心者のうちは、すべての外径に厳しい公差を入れてしまうことがあります。

しかし、公差を厳しくすると加工や検査の手間が増えます。

設計時には、

どの外径が機能上重要なのか
どの外径は一般公差でよいのか

を分けて考えることが大切です。


内径加工は深さと精度に注意する

旋盤加工では、外径だけでなく内径も加工できます。

たとえば、カラー、ブッシュ、ローラ、パイプ状の部品などでは、内径加工が必要になります。

内径加工では、外径加工と違い、工具が穴の中に入って加工します。

そのため、深い内径加工や細い内径加工では、工具の剛性や切粉の排出が問題になることがあります。

また、内径の奥側は見えにくく、加工や測定が難しくなる場合があります。

設計時には、

  • 内径は貫通できるか
  • 止まり穴にする必要があるか
  • 深さは必要最小限か
  • 内径公差は本当に必要か
  • 測定できる形状か
  • 工具が入る径か

を確認することが大切です。

特に、深い止まり穴の内径加工は手間がかかりやすいため、設計段階で注意が必要です。


段付き形状は角部の逃げを考える

シャフトやカラーでは、段付き形状がよく使われます。

段付き形状は、部品の位置決めや当たり面を作るために便利です。

しかし、段差の根元には注意が必要です。

旋盤加工では、工具の先端形状や加工方法によって、段差の根元にわずかなRが残ることがあります。

また、相手部品が段差の根元までしっかり当たる必要がある場合は、逃げ溝を設けることがあります。

たとえば、ベアリングやカラーを段付きシャフトに突き当てる場合、段差の根元にRがあると、相手部品の角が当たって奥まで入らないことがあります。

このような場合は、

  • 相手部品側に面取りを入れる
  • シャフト側に逃げ溝を入れる
  • 角部Rを考慮する
  • 当たり面を明確にする

といった対応が必要です。

段付き形状では、単に寸法を変えるだけでなく、相手部品がどこに当たるのかを考えることが大切です。


溝加工は幅と位置を明確にする

旋盤加工では、外周や内径に溝を入れることがあります。

たとえば、

  • 止め輪溝
  • Oリング溝
  • 逃げ溝
  • グリス溝
  • 抜け止め用の溝
  • 工具逃げ溝

などです。

溝加工では、溝幅、深さ、位置、角部形状が重要になります。

特に止め輪溝やOリング溝のように、規格部品と組み合わせる溝では、寸法を適切に指定する必要があります。

また、溝が細すぎたり深すぎたりすると、加工しにくくなります。

溝加工を指示するときは、

何のための溝なのか
規格部品と関係する溝なのか
溝幅と深さは適切か
角部Rや面取りは必要か

を確認します。

溝は小さな形状ですが、機能に大きく関係する場合があります。


ねじ加工は使い方を考えて指示する

旋盤加工では、外ねじや内ねじを加工することもあります。

たとえば、シャフト端部にナットを取り付けるための外ねじ。
部品を締結するための内ねじ。
調整用ねじ。
抜け止め用のねじ。

ねじ加工では、ねじサイズだけでなく、有効ねじ長さや逃げ、締結方法を考える必要があります。

初心者のうちは、図面に「M10」などと記入すれば十分だと思いがちです。

しかし実務では、

  • ねじ長さは足りているか
  • ナットや相手部品が最後まで入るか
  • ねじの根元に逃げが必要か
  • 端部の面取りは必要か
  • ねじ部に荷重がかかりすぎないか
  • 分解時に扱いやすいか

を考える必要があります。

特に外ねじでは、ねじの根元に工具逃げが必要になる場合があります。

ねじ部品は組立や調整に関係するため、使われ方を考えた設計が重要です。


長いシャフトはたわみや振れに注意する

旋盤加工では、長い部品や細い部品に注意が必要です。

長く細いシャフトは、加工中にたわみやすくなります。

また、回転させたときに振れが出やすくなることもあります。

たとえば、外径に対して長さがかなり長いシャフトでは、加工中の支持方法や精度確保が難しくなる場合があります。

設計者は、シャフトを設計するときに、

長さに対して外径が細すぎないか
支持点は適切か
必要な精度を出しやすい形状か
曲がりや振れが問題にならないか

を考えることが大切です。

もちろん、細長いシャフトが必要な場合もあります。

その場合は、使用中のたわみだけでなく、加工時の作りやすさも意識する必要があります。


チャックでつかむ部分を考える

旋盤加工では、材料をチャックなどでつかんで回転させます。

そのため、加工するには材料を保持する部分が必要です。

完成形だけを見ると問題がなくても、加工時にどこをつかむのかが考えにくい形状は、加工しにくくなることがあります。

たとえば、全長にわたって高精度な外径が必要な部品や、端部まで複雑な形状がある部品では、保持方法を考える必要があります。

また、片側から加工したあと、反対側をつかみ直して加工する場合は、基準の取り直しが必要になります。

設計者が意識したいのは、

どこを基準に加工するか
どこをつかんで加工できるか
つかみ替えによる精度への影響はないか

ということです。

加工時の保持を考えることは、図面上では見えにくいですが、実際の加工では重要なポイントです。


端面と面取りも大切

旋盤加工では、端面の仕上げや面取りもよく行います。

端面は、相手部品と当たる面になる場合があります。

カラーやスペーサでは、端面がきちんと仕上がっていないと、組立寸法や当たり方に影響します。

また、シャフト端部やカラー端部には、面取りを入れることが多くあります。

面取りには、

  • バリを取る
  • 組立時に入りやすくする
  • 手を切らないようにする
  • 相手部品を傷つけにくくする
  • ねじの入り口を整える

といった目的があります。

ただし、すべての角に大きな面取りを入れればよいわけではありません。

相手部品との当たり面が減ったり、必要な長さが不足したりする場合もあります。

設計時には、面取りの目的を考えて指示することが大切です。


丸物部品でも追加工が必要な場合がある

丸物部品は旋盤加工に向いています。

しかし、丸物部品に平面、横穴、キー溝、タップ穴などが入る場合は、旋盤加工だけでは完結しないことがあります。

たとえば、

  • シャフトに横穴をあける
  • 軸にキー溝を入れる
  • ローラ側面に平面取りをする
  • 円筒部品に横方向のタップを入れる
  • 丸物部品に切欠きを入れる

このような形状は、フライス加工や穴加工などの追加工程が必要になる場合があります。

追加工があると、段取りが増え、加工費や納期に影響します。

もちろん、機能上必要であれば問題ありません。

ただし、設計時には、

この形状は旋盤だけで作れるのか
追加工が必要になるのか
追加工する理由は明確か

を考えることが大切です。

丸い部品だから安く作れるとは限らない点に注意が必要です。


図面では中心線と寸法基準を意識する

旋盤加工部品の図面では、中心線が重要です。

外径、内径、段付き部、ねじ部、溝などは、中心線を基準に考えることが多いからです。

また、長さ方向の寸法基準も大切です。

どの端面を基準にするのか。
段差の位置はどこから測るのか。
重要な寸法はどれなのか。
組立時に必要な長さはどこなのか。

これらがわかりにくいと、加工者や検査者が迷います。

旋盤加工部品の図面では、

  • 中心線を明確にする
  • 外径寸法をわかりやすく入れる
  • 長さ方向の基準を整理する
  • 段付き部の寸法を明確にする
  • 必要な公差を適切に入れる
  • 面取りやR、逃げを指示する

ことが大切です。

図面の見やすさは、加工のしやすさにもつながります。


初心者が確認したいポイント

旋盤加工で作る部品を設計するときは、次のような内容を確認するとよいです。

  • 回転対称の形状になっているか
  • 旋盤加工に向いた形状か
  • 外径寸法の精度は適切か
  • 内径加工が深すぎないか
  • 段付き部の角にRや逃げは必要ないか
  • 相手部品が段差に正しく当たるか
  • 溝の幅や深さは適切か
  • ねじ長さは足りているか
  • 長く細すぎる部品になっていないか
  • チャックでつかむ部分を考えられるか
  • 面取りやバリ取りは適切か
  • 追加工が必要な形状はないか
  • 中心線と寸法基準がわかりやすいか

丸物部品は単純に見えることもあります。

しかし、軸受、位置決め、回転、締結、摺動などに関係することが多く、寸法や形状の意味を考えることが大切です。


まとめ

旋盤加工は、材料を回転させながら工具で削る加工です。

シャフト、ピン、カラー、スペーサ、ローラ、ブッシュなど、丸物部品の加工に向いています。

旋盤加工で作りやすいのは、中心軸に対して回転対称の形状です。

一方で、

長く細いシャフト
深い内径加工
段付き部の根元
細い溝
ねじ逃げ
横穴やキー溝などの追加工
チャックでつかみにくい形状

には注意が必要です。

設計者は、丸い形状だから簡単に作れると考えるのではなく、実際にどこをつかみ、どこを基準にし、どの順番で加工するのかを想像することが大切です。

良い旋盤加工部品の設計とは、単に丸い形を描くことではありません。

回転対称の特徴を活かし、必要な精度と作りやすさを両立した設計

です。

次回は、
「穴加工で初心者が注意したいポイント」
について解説します。