はじめに

機械設計では、部品を図面どおりに作れば、すべてがぴったり合うとは限りません。

実際の装置では、加工誤差、組立誤差、溶接ひずみ、現場据付誤差、ワークのばらつきなどがあります。

そのため、設計段階で
調整できる構造
を考えておくことが大切です。

たとえば、

  • センサー位置の調整
  • ストッパ位置の調整
  • シリンダ位置の調整
  • ガイド位置の調整
  • ワーク受け高さの調整
  • ベルトやチェーンの張り調整
  • カバーや扉の建付け調整

などです。

初心者のうちは、CAD上で位置が合っていれば問題ないと考えがちです。

しかし実務では、組立時や現地据付時に微調整が必要になることが多くあります。

今回は、機械設計初心者向けに、
「調整しやすい構造を設計する」
という考え方について解説します。


調整が必要な場所を見分ける

まず大切なのは、どこに調整が必要かを見分けることです。

すべての部品を調整式にする必要はありません。

むしろ、何でも調整式にすると、位置が決まりにくくなり、組立に時間がかかります。

調整が必要になりやすいのは、

  • センサーの検出位置
  • ワークを受ける位置
  • ストッパの停止位置
  • シリンダやアクチュエータの押し位置
  • ガイドやレールの平行
  • ベルトやチェーンの張り
  • 既設設備に取り付ける部品

などです。

設計時には、

現場で位置を合わせる必要があるか
相手部品やワークにばらつきがあるか
後から調整する可能性があるか
逆に、動いてはいけない基準部ではないか

を確認します。

調整構造は、必要な場所にだけ入れることが大切です。


長穴は調整方向を決めて使う

調整構造でよく使うのが長穴です。

長穴にしておくと、ボルトを少し緩めて部品の位置を動かせます。

ただし、長穴は何となく入れるものではありません。

重要なのは、
どの方向に調整したいのか
を決めることです。

たとえば、センサーを前後に動かしたいなら前後方向の長穴にします。

ストッパを上下に調整したいなら上下方向の長穴にします。

長穴の向きが調整方向と合っていないと、せっかく長穴にしても意味がありません。

また、長穴にすると位置が決まりにくくなるため、必要に応じて基準面や目盛り、位置決めピンを併用することもあります。

長穴は便利ですが、
調整しやすさと位置決めのしやすさのバランス
を考えて使うことが大切です。


シムで高さやすき間を調整する

高さやすき間を微調整したい場合は、シムを使うことがあります。

シムとは、薄い板を挟んで高さや位置を調整する部品です。

たとえば、

  • ガイドレールの高さ調整
  • モーターやベースの芯出し
  • ワーク受けの高さ調整
  • ストッパの当たり位置調整
  • 装置据付時のレベル調整

などで使います。

シム調整の良い点は、調整量を管理しやすいことです。

0.1mm、0.2mm、0.5mmなどのシムを組み合わせれば、細かい調整ができます。

ただし、シムを入れる場所には注意が必要です。

シムを入れる面が狭いと、締付時に部品が傾いたり、座りが悪くなったりします。

設計時には、

シムを入れるスペースはあるか
シムを後から抜き差しできるか
ボルトを少し緩めれば調整できるか
シムを入れても座面が安定するか

を確認します。

シム調整は、精度が必要な場所で使いやすい方法です。


ジャッキボルトで押して調整する

重い部品や微調整が必要な部分では、ジャッキボルトを使うことがあります。

ジャッキボルトとは、ボルトで部品を押して位置を調整する仕組みです。

たとえば、モーターベースやガイドベース、ストッパ位置の調整などで使います。

手で動かしにくい部品でも、ジャッキボルトを使えば少しずつ位置を動かせます。

特に、重量物や高精度な位置合わせでは有効です。

設計時には、

どの方向に押して調整するか
押す相手面は十分な強度があるか
調整後に固定ボルトでしっかり締結できるか
ジャッキボルトが作業しやすい位置にあるか

を確認します。

ジャッキボルトは便利ですが、押すだけでは固定になりません。

調整後に、固定ボルトでしっかり保持することが大切です。


基準面を作ると調整しやすい

調整しやすい構造では、基準面を作ることも重要です。

基準面がないと、部品をどこに合わせればよいのか分かりにくくなります。

たとえば、長穴だけで部品を取り付けると、上下左右に動いてしまい、位置出しに時間がかかることがあります。

その場合、片側に突き当て面を作ると、調整方向を限定できます。

また、基準面に当てた状態で、もう一方向だけ長穴で調整するようにすると、組立がしやすくなります。

設計時には、

どこを基準に位置を決めるのか
突き当て面は必要か
調整方向を一方向に限定できないか
調整後に位置が再現できるか

を考えます。

調整構造は、自由に動かせればよいわけではありません。

基準があるから、調整しやすくなります。


調整後に固定できることが重要

調整構造で忘れてはいけないのが、調整後の固定です。

長穴やシム、ジャッキボルトで位置を合わせても、固定が弱いと使用中にずれてしまいます。

特に、振動や衝撃がある部分では注意が必要です。

設計時には、

調整後にボルトでしっかり締結できるか
座面は十分にあるか
ワッシャは適切か
ゆるみ止めが必要ではないか
位置決めピンを追加する必要はないか

を確認します。

調整しやすいだけでなく、調整後に安定して使えることが大切です。

調整構造は、
動かせること
と
固定できること
をセットで考えます。


調整しやすさと作業性を見る

調整構造を作っても、作業しにくければ現場では使いづらくなります。

たとえば、調整ボルトが奥にありすぎて工具が入らない。
調整中に目盛りが見えない。
固定ボルトを締めると位置がずれる。
一人では調整しにくい。

このような構造では、調整に時間がかかります。

設計時には、

調整ボルトに工具が届くか
調整方向を確認できるか
固定ボルトを締めても位置が動かないか
作業者が無理な姿勢にならないか

を確認します。

調整構造は、CAD上で動けばよいわけではありません。

実際に現場で作業しやすいことが重要です。


初心者が確認したいポイント

調整しやすい構造を設計するときは、次の内容を確認するとよいです。

  • 本当に調整が必要な場所か
  • どの方向に調整するのか
  • 調整量はどれくらい必要か
  • 長穴の向きは合っているか
  • シムを入れるスペースはあるか
  • ジャッキボルトで押す面はあるか
  • 基準面や突き当ては必要か
  • 調整後にしっかり固定できるか
  • 工具を入れるスペースはあるか
  • 調整作業を現場で行いやすいか

調整構造は、必要な場所に、必要な方向だけ設けることが大切です。


まとめ

調整しやすい構造は、機械設計でとても重要です。

加工誤差、組立誤差、現場据付誤差、ワークのばらつきがあるため、実務では調整が必要になる場面が多くあります。

ただし、何でも調整式にすればよいわけではありません。

設計では、

調整が必要な場所
調整方向
調整量
長穴
シム
ジャッキボルト
基準面
固定方法
作業性

を考える必要があります。

良い調整構造とは、ただ動かせる構造ではありません。

必要な方向に調整でき、調整後にしっかり固定でき、現場で作業しやすい構造
です。

初心者のうちは、調整構造を入れる前に、
何を、どの方向に、どれくらい調整したいのか
を確認する習慣を持つとよいです。

次回は、
「センサー取付ブラケットの設計ポイント」
について解説します。