はじめに

機械部品の図面では、面取りやバリ取りの指示を入れることがあります。

面取りとは、部品の角を斜めに削ることです。
バリ取りとは、加工後に残った鋭い突起やめくれを取り除くことです。

どちらも小さな処理に見えるかもしれません。

しかし実務では、面取りやバリ取りはとても重要です。

角が鋭いままだと、作業者が手を切ることがあります。
バリが残っていると、部品が正しく密着しないことがあります。
穴のバリでボルトが入りにくくなることもあります。
ワークや配線、チューブを傷つけることもあります。

一方で、すべての角に細かく面取り寸法を指定しすぎると、加工工数が増えてしまいます。

初心者のうちは、

「全部C1にしておけば安心」
「バリ取りは加工者がやってくれるはず」
「面取りは見た目のためのもの」
「図面に細かく書かなくても大丈夫」

と考えてしまうことがあります。

しかし、面取りやバリ取りには、設計上の意味があります。

今回は、機械設計初心者向けに
「面取り・バリ取りを図面でどう考えるか」
について解説します。


面取りとは何か

面取りとは、部品の角を削って、鋭いエッジをなくす加工です。

一般的には、角を斜めに削るC面取りがよく使われます。

たとえば、C0.5、C1、C2のように指示します。

C1であれば、角からおおよそ1mmずつ斜めに削るようなイメージです。

面取りには、いくつかの目的があります。

  • 手を切らないようにする
  • 組立時に入りやすくする
  • バリを取りやすくする
  • 相手部品を傷つけにくくする
  • ボルトやピンを挿入しやすくする
  • 角欠けを防ぐ
  • 見た目を整える

面取りは、単なる見た目の処理ではありません。

作業性、安全性、組立性、部品の扱いやすさに関係する重要な加工です。


バリとは何か

バリとは、加工後に部品の端部に残る薄い突起やめくれのことです。

切削加工、穴あけ加工、板金加工、せん断加工、レーザー加工など、さまざまな加工でバリが発生します。

たとえば、ドリルで穴をあけたとき、穴の出口側にバリが出ることがあります。

フライス加工で外形を削ったとき、角部に小さなバリが残ることもあります。

板金を切断したとき、切断面に鋭いバリが出ることもあります。

バリは小さなものですが、機械部品では大きな問題につながることがあります。

  • 作業者がケガをする
  • 部品が密着しない
  • 組立時に引っかかる
  • ワークに傷が付く
  • 配線やチューブを傷つける
  • 摺動部で異常摩耗する
  • センサー取付面が浮く
  • 塗装や表面処理の品質に影響する

そのため、設計者はバリが出ることを前提に、必要な場所でバリ取りを考える必要があります。


面取りとバリ取りは同じではない

面取りとバリ取りは似ていますが、同じ意味ではありません。

面取りは、角に決められた大きさの面を作る加工です。

一方、バリ取りは、加工後に残ったバリを除去する作業です。

たとえば、図面にC1と指示すれば、その角にはC1の面取りが必要です。

しかし「バリなきこと」や「指示なき角部はバリ取りのこと」といった指示の場合は、基本的には危険なバリや引っかかりをなくす意味になります。

つまり、

面取りは形状を作る指示
バリ取りは不要な突起を取る指示

と考えるとわかりやすいです。

すべてのバリ取りを面取りとして寸法指定する必要はありません。

反対に、機能上必要な面取りを「バリ取りでよい」とあいまいにしてはいけない場合もあります。


面取りが必要になる場所

面取りが必要になる場所には、いくつかのパターンがあります。

まず、作業者が触れる場所です。

カバーの端部、持ち手、調整部、交換部品など、人の手が触れる部分は鋭い角を避ける必要があります。

次に、部品を挿入する場所です。

ピン、シャフト、カラー、ベアリング、ブッシュ、ボルトなどを入れる入口には、面取りがあると組立しやすくなります。

また、相手部品に接触する角も注意が必要です。

角が鋭いと、相手部品に傷を付けることがあります。

ワークを受ける治具部品や、樹脂・ゴム・フィルムなどに触れる部品では特に注意が必要です。

面取りが必要になりやすい場所は、次のような部分です。

  • 手が触れる外周部
  • ボルト穴やピン穴の入口
  • シャフトやカラーの端部
  • ワークに接触する角
  • 配線やチューブが通る穴
  • 摺動部に近い角
  • 組立時に差し込む部分
  • 角欠けを防ぎたい部分

面取りは、部品の使われ方を考えて決めることが大切です。


面取りを入れすぎると問題になる場合もある

面取りは便利ですが、入れすぎると問題になる場合もあります。

たとえば、部品同士が当たる面に大きな面取りを入れると、接触面積が減ってしまうことがあります。

位置決め面の角を大きく面取りすると、当たり面が不足することがあります。

短いカラーやスペーサでは、端面に大きな面取りを入れすぎると、有効な長さが減ることがあります。

また、薄い板に大きな面取りを入れると、端部が弱くなる場合もあります。

面取りは安全性や組立性に役立ちますが、機能面に影響することもあります。

設計時には、

その面取りは何のためか
大きさは適切か
当たり面や有効寸法を減らしていないか
位置決めに影響しないか

を確認することが大切です。

なんとなく全部C1にするのではなく、必要な場所に必要な大きさで入れることが基本です。


穴の面取りは組立性に影響する

穴の入口には、面取りを入れることが多くあります。

穴の面取りには、いくつかの目的があります。

ボルトやピンを入れやすくする。
穴あけ後のバリを取る。
作業者が触れたときに危なくないようにする。
相手部品や配線を傷つけにくくする。

特に、ピンやシャフトを入れる穴では、入口に軽い面取りがあると組立しやすくなります。

面取りがないと、ピンの先端が穴の角に引っかかることがあります。

また、配線やチューブが通る穴では、穴のエッジが鋭いと被覆やチューブを傷つける恐れがあります。

その場合は、単なるバリ取りではなく、面取りやブッシュ、グロメットなどを検討することもあります。

穴の面取りは、小さな処理ですが、組立性や安全性に大きく関係します。


位置決め面の面取りは注意する

位置決めに使う面や角では、面取りの入れ方に注意が必要です。

たとえば、部品を段差に突き当てて位置決めする場合を考えます。

その当たり面に大きな面取りが入っていると、相手部品が正しく当たらない場合があります。

また、角を基準にして位置を決めるような形状では、面取りによって基準があいまいになることがあります。

もちろん、角に小さなバリが残っていると、それはそれで問題です。

そのため、位置決め部では、

どこを当たり面にするのか
面取りしてよい角なのか
面取り量はどこまで許容できるのか
相手部品に逃げはあるのか

を考える必要があります。

位置決め面では、面取りを入れることと、基準面を残すことのバランスが重要です。


ワークに触れる部分は特に注意する

治具や搬送装置では、部品がワークに接触することがあります。

ワークに触れる部分のエッジが鋭いと、ワークに傷を付ける可能性があります。

特に、

  • 樹脂部品
  • ゴム部品
  • フィルム
  • 塗装品
  • メッキ品
  • 紙製品
  • 外観部品
  • 柔らかい材料

を扱う場合は注意が必要です。

ワークに触れる部分では、面取りやR加工を検討することがあります。

C面取りよりも、R形状の方がワークにやさしい場合もあります。

また、金属ではなく、樹脂材やウレタン、ゴムなどを接触部に使うこともあります。

設計時には、

ワークに傷を付けないか
角が当たらないか
面取りだけで十分か
R形状や材質変更が必要か

を確認することが大切です。


バリ取り指示はあいまいにしすぎない

バリ取りは、多くの図面で一般的な指示として入れられます。

たとえば、

「バリなきこと」
「指示なき角部は糸面取りのこと」
「鋭角部なきこと」

といった指示です。

このような一般指示は便利です。

しかし、機能上重要な部分まで一般指示だけで済ませると、設計意図が伝わりにくいことがあります。

たとえば、配線が通る穴や、ワークに接触するエッジでは、単なるバリ取り以上の処理が必要な場合があります。

また、安全上、人が頻繁に触れる部分では、面取り量を明確にした方がよいこともあります。

バリ取り指示では、

一般的なバリ取りでよい部分
面取り寸法を明確にすべき部分
R加工や保護部品が必要な部分

を分けて考えることが大切です。


糸面取りとは何か

図面や加工現場では、「糸面取り」という言葉を使うことがあります。

糸面取りとは、ごく小さな面取りのことです。

明確な大きさのC面取りというより、鋭い角やバリを軽く落とすイメージです。

ただし、糸面取りの大きさや解釈は、会社や加工先によって差が出ることがあります。

そのため、機能上重要な部分では「糸面取り」で済ませず、C0.5やC1などの具体的な寸法で指示した方がよい場合があります。

糸面取りは、一般的なバリ取りや安全対策としては使いやすい表現です。

しかし、組立性や干渉に関係する部分では、あいまいさが残ることもあります。

設計時には、

糸面取りで十分な部分か
具体的な面取り寸法が必要な部分か

を分けて考えることが大切です。


C面取りとR面取りの違い

面取りには、C面取りとR面取りがあります。

C面取りは、角を斜めに落とす面取りです。

一般的な機械部品では、C0.5、C1、C2などのC面取りがよく使われます。

一方、R面取りは、角を丸くする加工です。

R面取りは、ワークに傷を付けたくない部分や、人が触れる部分、応力集中を避けたい部分などで使われることがあります。

C面取りは加工しやすく、図面指示もしやすい方法です。

R面取りは、接触相手にやさしい形状にできますが、加工方法やコストに注意が必要な場合があります。

どちらが良いかは、用途によって変わります。

設計時には、

組立しやすくしたいのか
ワークを傷つけたくないのか
安全性を高めたいのか
応力集中を減らしたいのか

を考えて選ぶことが大切です。


バリが残ると密着不良になることがある

バリでよく起きる問題のひとつが、密着不良です。

たとえば、部品同士をボルトで固定するとき、取付面にバリが残っていると、部品が正しく密着しないことがあります。

見た目には締まっているように見えても、バリの上に乗った状態になっている場合があります。

この状態では、

  • 部品が傾く
  • 位置がずれる
  • 締結力が安定しない
  • 使用中に緩む
  • ガタが出る
  • 精度が出ない

といった問題につながる可能性があります。

特に、基準面、取付面、座面、摺動面では、バリに注意が必要です。

面取りやバリ取りは、安全のためだけでなく、部品を正しく組み付けるためにも重要です。


板金部品では切断面のバリに注意する

板金部品では、切断面のバリに注意が必要です。

レーザー加工、せん断加工、タレパン加工などでは、切断面や穴の周辺にバリが出ることがあります。

板金カバーやブラケットでは、端部に手が触れることも多いため、安全面で重要です。

また、曲げ部の近くにバリがあると、組立時に引っかかったり、塗装やメッキの仕上がりに影響したりすることがあります。

板金部品では、

  • 外周エッジ
  • 長穴や丸穴の周辺
  • 作業者が触れる端部
  • ケーブルやホースが近い部分
  • ワークと接触する部分
  • 曲げ後に手が入りにくい部分

を意識して確認します。

板金部品では、切断・曲げ・表面処理の流れまで考えて、バリ取りや面取りを指示することが大切です。


面取りは加工費にも影響する

面取りは、小さな加工ですが、数が多いと加工費に影響します。

たとえば、すべての角にC1を細かく指定すると、その分だけ加工工程が増えます。

特に、複雑な形状や多数の穴がある部品では、面取り箇所が多くなります。

穴の両面面取り、外周面取り、ポケット内の面取り、溝端部の面取りなどをすべて指定すると、加工者の作業は増えます。

もちろん、必要な面取りは入れるべきです。

しかし、機能に関係ない部分まで過剰に指定すると、コストアップにつながります。

設計時には、

必要な面取り
一般的なバリ取りでよい部分
面取り不要な部分

を分けて考えることが大切です。


表面処理前後のバリも考える

面取りやバリ取りは、表面処理とも関係します。

たとえば、メッキや塗装を行う部品では、鋭い角があると処理が付きにくかったり、塗膜が薄くなったりすることがあります。

また、バリが残ったまま表面処理をすると、処理後にバリが剥がれたり、外観不良になったりすることがあります。

アルマイト、メッキ、塗装、黒染めなどを行う部品では、加工後だけでなく、表面処理後の状態も考える必要があります。

特に、手で触れる部分や外観部品では、バリや鋭角が問題になりやすいです。

設計時には、

表面処理前にバリを取る必要があるか
鋭角部に処理が付きにくくないか
処理後に手触りや外観に問題が出ないか

も意識するとよいです。


図面では重要な角を明確にする

面取りやバリ取りの図面指示で大切なのは、重要な角を明確にすることです。

すべての角に細かく寸法を入れるのではなく、機能上意味のある角に必要な指示を入れます。

たとえば、

  • ピンが入る入口はC0.5
  • ワーク接触部はR1
  • 作業者が触れる端部はC1
  • 位置決め面の角は糸面取り程度
  • 取付面はバリなきこと
  • 配線貫通穴はC1または保護部品使用

というように、用途に応じて考えます。

一般指示として「指示なき角部はバリ取りのこと」と入れたうえで、重要な部分だけ個別に寸法を入れる方法もあります。

図面は、加工者に全部を細かく押し付けるためのものではありません。

重要な意図を正しく伝えることが大切です。


初心者が確認したいポイント

面取りやバリ取りを考えるときは、次のような内容を確認するとよいです。

  • 作業者が手を触れる部分ではないか
  • 組立時に部品が入りやすい形状か
  • ボルトやピンの入口に面取りが必要か
  • ワークを傷つける角がないか
  • 配線やチューブを傷つけないか
  • 取付面にバリが残ると密着不良にならないか
  • 位置決め面の面取り量は適切か
  • すべての角に過剰な面取りを入れていないか
  • 糸面取りで十分か、寸法指定が必要か
  • C面取りがよいか、R面取りがよいか
  • 板金の切断面にバリ対策が必要か
  • 表面処理後の状態も考えているか
  • 図面指示があいまいすぎないか

面取りやバリ取りは、小さな処理ですが、実務では見落とせない重要なポイントです。


まとめ

面取りやバリ取りは、機械部品の加工でとても重要な処理です。

面取りには、

安全性を高める
組立しやすくする
相手部品を傷つけにくくする
角欠けを防ぐ
外観を整える

といった役割があります。

バリ取りには、

ケガを防ぐ
密着不良を防ぐ
組立時の引っかかりを減らす
ワークや配線を傷つけない
摺動部や取付面の不具合を防ぐ

という役割があります。

ただし、すべての角に過剰な面取りを指定すると、加工工数やコストが増えることがあります。

大切なのは、

必要な場所には明確に指示する
一般的なバリ取りでよい部分は過剰指定しない
機能に関係する角は用途に合わせて考える

ことです。

良い図面とは、すべてを細かく指定した図面ではありません。

加工者が迷わず、組立者が扱いやすく、使用時にも安全な状態が伝わる図面

です。

次回は、
「表面粗さはどこまで指定すればよいのか」
について解説します。