測定しやすい寸法記入の考え方
機械図面では、部品の形状や寸法を正しく伝えることが大切です。
しかし実務では、それだけでなく、加工後に測定しやすい図面になっているかも重要になります。
部品は加工したあと、図面通りにできているかを確認します。
そのため、図面に入っている寸法が測定しにくいと、検査に時間がかかったり、現場で迷いが出たりします。
今回は、加工しやすい図面を描くために大切な、測定しやすい寸法記入の考え方について解説します。
測定しやすい寸法とは?
測定しやすい寸法とは、加工後の部品を見たときに、実際に工具や測定器で確認しやすい寸法のことです。
たとえば、ノギスで測れる外形寸法、マイクロメータで確認できる厚み寸法、高さゲージで追いやすい穴位置寸法などです。
図面上では問題なく見えても、実物になったときに測りにくい寸法があります。
たとえば、直接測れない位置の寸法や、計算しないと確認できない寸法ばかりが入っている図面です。
このような図面では、検査する人が余分な手間をかけることになります。
設計者は、寸法を入れるときに
「この寸法は実際にどう測るのか」
を考えることが大切です。
図面は検査者も見る
図面を見るのは加工者だけではありません。
加工後の部品を確認する検査者も図面を見ます。
そのため、図面は加工しやすいだけでなく、検査しやすいことも大切です。
たとえば、加工者は基準面から穴をあけたのに、検査では別の面から測る寸法になっていると、確認がしにくくなります。
また、寸法の基準があちこちに飛んでいると、検査者は測定のたびに基準を変えなければなりません。
これは検査ミスの原因にもなります。
加工基準と検査基準が大きくずれている図面は、現場で扱いにくい図面になります。
寸法を入れるときは、
加工するときに自然な寸法か
検査するときに確認しやすい寸法か
の両方を考えるようにしましょう。
直接測れる寸法を意識する
測定しやすい図面にするためには、できるだけ直接測れる寸法を意識します。
たとえば、プレートの外形寸法や厚み寸法は、ノギスやマイクロメータで確認しやすい寸法です。
また、端面から穴中心までの寸法は、高さゲージや三次元測定機などで確認しやすい場合があります。
反対に、部品の端から端までを計算で求めないと確認できない寸法や、斜め方向にしか入っていない寸法は、測定しにくいことがあります。
もちろん、設計上どうしても必要な寸法であれば問題ありません。
しかし、特に理由がない場合は、できるだけ測定しやすい寸法記入にした方が現場では親切です。
図面を描いたあとに、
「この寸法はノギスで測れるか」
「高さゲージで確認できるか」
「検査時に計算が必要にならないか」
と見直すだけでも、かなり実務向けの図面になります。
基準面から測れる寸法にする
測定しやすい寸法を考えるうえで、基準面はとても重要です。
前回の記事でも説明したように、部品には加工や組立の基準になる面があります。
検査でも、その基準面から測れるように寸法が整理されていると、確認しやすくなります。
たとえば、プレートに複数の穴がある場合、左端面と下端面を基準にして穴位置を寸法記入すると、測定時も基準がわかりやすくなります。
一方で、ある穴は左端面から、別の穴は右端面から、さらに別の穴は穴同士のピッチで寸法が入っていると、検査時に迷いやすくなります。
寸法を入れるときは、
どの面から測ると自然か
どの基準を使えば確認しやすいか
を考えることが大切です。
基準面から寸法を追いやすい図面は、加工者にも検査者にも伝わりやすい図面になります。
測定器をイメージして寸法を見る
初心者のうちは、図面上で寸法が成立していれば問題ないと思いがちです。
しかし実務では、その寸法をどの測定器で確認するかも重要です。
代表的な測定器には、ノギス、マイクロメータ、高さゲージ、ダイヤルゲージ、三次元測定機などがあります。
たとえば、外径や板厚ならノギスやマイクロメータで測りやすいです。
穴位置なら、高さゲージや三次元測定機で確認することが多くなります。
平面度や振れなどは、測定方法を考えたうえで指示する必要があります。
すべての測定器を詳しく覚える必要はありません。
まずは、図面を見ながら
「この寸法はどの道具で測るのだろう」
と考えるだけでも十分です。
測定方法を少し意識するだけで、寸法の入れ方は変わってきます。
測定しにくい寸法の例
測定しにくい寸法には、いくつかの共通点があります。
たとえば、次のような寸法です。
- 基準がはっきりしない寸法
- 直接測れず、計算が必要な寸法
- 斜め方向でしか確認できない寸法
- 測定器が入りにくい場所の寸法
- 加工基準と検査基準がずれている寸法
- 寸法の起点があちこちに飛んでいる図面
このような寸法が多いと、現場で確認作業に時間がかかります。
また、人によって測り方が変わると、測定結果にもばらつきが出る可能性があります。
寸法は、図面上で成立しているだけでなく、実際の部品で確認しやすいことが大切です。
設計者が確認したいポイント
図面を描いたあと、次のように確認すると測定しにくい寸法に気づきやすくなります。
- この寸法は直接測れるか
- どの測定器で確認するか
- 基準面から測りやすいか
- 検査時に計算が必要にならないか
- 測定器が入るスペースはあるか
- 加工基準と検査基準が大きくずれていないか
特に大切なのは、図面を描いたあとに一度、検査する人の目線で見直すことです。
設計者の頭の中では理解できていても、図面を見る側には伝わりにくいことがあります。
「この寸法、実際にどうやって測るのだろう?」
この視点を持つだけで、図面の質は大きく変わります。
まとめ
測定しやすい寸法記入とは、加工後の部品を確認しやすい寸法の入れ方です。
図面は加工者だけでなく、検査者も見ます。
そのため、寸法は作りやすいだけでなく、測りやすいことも大切です。
直接測れる寸法にすること。
基準面から追いやすくすること。
測定器をイメージすること。
検査時に迷わない寸法にすること。
これらを意識すると、現場で使いやすい図面になります。
初心者のうちは、図面を描いたあとに
「この寸法は実物でどう測るのか」
と考えるだけでも十分です。
次回は、部品図でよく出てくる
「穴位置寸法で失敗しないための基本」
について解説します。
