はじめに

機械部品を設計するとき、形状や寸法、公差に目が向きやすいと思います。

もちろん、それらはとても重要です。

しかし実務では、もうひとつ大切な視点があります。

それが、
材料取り

標準材
です。

材料取りとは、必要な部品をどの材料から、どのように切り出すかを考えることです。

標準材とは、一般的に流通している板材、丸棒、角材、フラットバー、角パイプ、アングル材などのことです。

初心者のうちは、

「CADで必要な形を作ればよい」
「材料は加工者が選んでくれる」
「少し大きめに作っておけば安心」
「板厚や外形寸法は自由に決めてよい」

と考えてしまうことがあります。

しかし、材料寸法を意識せずに設計すると、

材料費が高くなる
加工量が増える
納期が長くなる
標準材が使えない
端材が多く出る
見積金額が上がる

といった問題につながることがあります。

今回は、機械設計初心者向けに
「材料取りと標準材を意識した設計」
について解説します。


材料取りとは何か

材料取りとは、部品を作るために、どの大きさの材料から切り出すかを考えることです。

たとえば、100×80×20のブロック部品を作る場合、実際には100×80×20ぴったりの材料から作るわけではありません。

少し大きめの材料を用意し、切断し、必要な面を加工して仕上げます。

板金部品であれば、板材から外形を切り出します。

丸物部品であれば、丸棒から必要な長さを切断して加工します。

製缶部品であれば、角パイプや鋼板を必要な長さや形状に切断して組み合わせます。

つまり、部品は図面形状だけでなく、
材料からどう取り出すか
を考えて作られます。

設計者が材料取りを意識すると、加工しやすく、無駄の少ない部品にしやすくなります。


標準材とは何か

標準材とは、一般的に流通している材料形状や寸法のことです。

代表的なものには、

  • 板材
  • 丸棒
  • 角棒
  • 平鋼
  • フラットバー
  • 角パイプ
  • 丸パイプ
  • アングル材
  • チャンネル材
  • H形鋼
  • 六角棒

などがあります。

これらは、規格寸法や流通しやすい寸法があります。

設計者が標準材を意識して寸法を決めると、材料の入手がしやすくなり、コストや納期を抑えやすくなります。

反対に、標準材から大きく外れた寸法で設計すると、材料手配が難しくなったり、余分な加工が増えたりすることがあります。

標準材を使うということは、単に安い材料を使うという意味ではありません。

作りやすく、手配しやすく、安定して製作できる材料を選ぶ
ということです。


材料寸法を少し変えるだけでコストが変わる

機械設計では、数mmの寸法差が材料費や加工費に影響することがあります。

たとえば、幅50mmでよい部品を、なんとなく52mmに設計したとします。

もし50mm幅のフラットバーが使える部品であれば、幅50mmにしておくことで材料をそのまま活用できる場合があります。

しかし52mmにすると、より大きな材料から切り出して、幅方向を加工する必要が出るかもしれません。

図面上では、たった2mmの違いです。

しかし実際には、

  • 材料サイズが変わる
  • 切断量が増える
  • 面加工が必要になる
  • 端材が増える
  • 加工時間が増える

といった影響が出ることがあります。

寸法は、機能だけでなく、材料の取り方にも関係します。

設計時には、
この寸法は標準材に合わせられないか
を考えることが大切です。


板材では板厚を意識する

板材を使う部品では、板厚の選定が重要です。

たとえば、t3.2、t4.5、t6、t9、t12など、よく使われる板厚があります。

会社や業界、材料によって使いやすい板厚は変わりますが、一般的に流通しやすい板厚を選ぶことは重要です。

初心者のうちは、CAD上で必要な強度や寸法だけを考えて、板厚を自由に決めてしまうことがあります。

しかし、中途半端な板厚を指定すると、材料手配や加工が難しくなる場合があります。

たとえば、t5.5のような板厚を指定しても、標準材として手配しにくいことがあります。

その場合、t6から加工して薄くする必要が出たり、特別な材料手配になったりします。

板材を使うときは、

必要な強度を満たすか
流通しやすい板厚か
加工しやすい板厚か
他の部品と板厚を統一できないか

を考えるとよいです。


丸物部品では丸棒径を意識する

旋盤加工で作る部品では、丸棒から材料を取ることが多くあります。

シャフト、ピン、カラー、スペーサ、ローラー、ブッシュなどです。

このような部品では、完成外径だけでなく、元の丸棒径を意識することが大切です。

たとえば、完成外径がφ31の部品を設計した場合、φ32材やφ35材から加工することになるかもしれません。

もし機能上φ30で問題ない部品であれば、φ30の丸棒を使える可能性があります。

もちろん、加工代や材料の黒皮、精度、表面状態によって、完成径と素材径の考え方は変わります。

しかし設計者としては、

その外径は標準丸棒に対して無理がないか
少し寸法を変えれば材料取りが良くならないか
余分に削る量が多すぎないか

を意識することが大切です。

丸物部品では、外径寸法が材料費と加工時間に直結しやすいです。


角材・フラットバーを活用する

ブロック形状の部品やブラケットでは、角材やフラットバーを使える場合があります。

たとえば、幅50mm、厚み12mm程度の単純なプレートであれば、フラットバーから切り出せることがあります。

角材を使えば、外形加工を減らせる場合もあります。

しかし、設計寸法が標準材から外れていると、大きな板材や角材から切り出して、四面を加工する必要が出ることがあります。

これは、材料費と加工費の両方に影響します。

設計時には、

フラットバーで取れる形状か
角材から加工できる形状か
外形寸法を標準材に合わせられないか
全面加工が本当に必要か

を確認するとよいです。

すべての面をきれいに削る必要がない部品であれば、標準材の外形を活かすことでコストを下げられる場合があります。


角パイプやアングル材を使う考え方

製缶部品では、角パイプやアングル材、チャンネル材を使うことが多くあります。

これらの鋼材は、フレームや架台、ブラケット、補強材に向いています。

たとえば、装置架台をすべて鋼板から切り出して作るより、角パイプを組み合わせた方が軽く、剛性を出しやすい場合があります。

アングル材やチャンネル材を使えば、部品形状を簡単にできることもあります。

ただし、これらの鋼材にも標準寸法があります。

角パイプであれば、□30、□40、□50など、よく使われるサイズがあります。

アングルやチャンネルも、一般的なサイズを選ぶことで材料手配がしやすくなります。

設計時には、

鋼材の標準サイズを使えないか
専用の曲げ部品にする必要があるか
切削部品より鋼材組み合わせの方がよくないか

を考えることが大切です。


材料の向きや長さも考える

材料取りでは、材料の向きや長さも重要です。

たとえば、長い部品を板材から切り出す場合、板のどの方向に取るかで端材の出方が変わります。

丸棒や角パイプでは、定尺材から何本取れるかが関係します。

同じ長さの部品を複数作る場合、材料の取り方によって無駄が少なくなることがあります。

設計者がすべての材料取りを細かく決める必要はありません。

しかし、

極端に長い部品になっていないか
分割した方が材料取りが良くならないか
同じ長さや同じ幅に統一できないか
端材が多く出る寸法ではないか

を意識すると、製作側との会話がしやすくなります。

特に量産品や複数個製作する部品では、材料取りの影響が大きくなります。


削りすぎる設計は加工費が上がる

切削加工では、材料を削って形を作ります。

そのため、完成形に対して素材が大きすぎると、削る量が増えます。

削る量が増えると、

  • 加工時間が長くなる
  • 工具摩耗が増える
  • 切粉が増える
  • 段取りが増える
  • 加工費が上がる

ことがあります。

たとえば、大きなブロック材から深いポケットを削って、薄い壁だけ残すような形状です。

CAD上では問題なく見えても、実際には大量の材料を削り落とすことになります。

このような場合は、

板材を組み合わせられないか
製缶構造にできないか
別部品に分割できないか
標準材の形状を活かせないか

を考えることが大切です。

設計では、形を作ることだけでなく、
どれだけ削る必要があるか
も意識しましょう。


端材を減らす考え方

材料取りでは、端材を減らすことも重要です。

端材とは、材料から必要な部品を切り出した後に残る余り材料のことです。

端材が多いと、材料費の無駄になります。

もちろん、すべての端材をなくすことはできません。

しかし、設計寸法を少し調整するだけで、材料の取り方が良くなる場合があります。

たとえば、

  • 同じ幅の部品をそろえる
  • 同じ板厚に統一する
  • 同じ長さの部材を増やす
  • 標準材の幅に合わせる
  • 大きすぎる外形を見直す
  • 分割して取りやすい形にする

といった方法です。

特に、複数個製作する部品や、同じような部品が多い装置では、材料取りを意識すると効果が大きくなります。

材料取りの良い設計は、コストだけでなく、製作のしやすさにもつながります。


材料の入手性は納期に影響する

標準材を使うメリットのひとつは、材料を入手しやすいことです。

一般的に流通している材料であれば、短納期で手配できる可能性が高くなります。

一方で、特殊な寸法や特殊な材料を指定すると、入手に時間がかかることがあります。

たとえば、

  • あまり使わない板厚
  • 特殊な材質
  • 特殊な表面処理材
  • 大きすぎる材料
  • 規格外のパイプ寸法
  • 指定メーカー限定の材料

などです。

もちろん、機能上必要であれば特殊材を使うべきです。

しかし、理由なく特殊な材料や寸法を指定すると、納期が長くなる原因になります。

設計時には、

その材料はすぐ手に入るか
標準材に置き換えられないか
特殊材を使う理由はあるか

を考えることが大切です。


材質を統一すると管理しやすい

装置設計では、多くの部品を使います。

その中で材質がばらばらだと、材料手配や管理が複雑になります。

たとえば、同じようなプレート部品なのに、SS400、S45C、SUS304、A5052などが混在していると、製作側も管理が大変になります。

もちろん、用途によって材質を変える必要はあります。

強度、耐食性、摩耗、重量、表面処理、溶接性などによって適切な材質は変わります。

しかし、理由なく材質を増やす必要はありません。

設計時には、

同じ用途の部品は材質を統一できないか
本当にその材質が必要か
表面処理で対応できないか
標準的に使っている材質に合わせられないか

を考えるとよいです。

材質を整理すると、材料手配、加工、見積、在庫管理がしやすくなります。


板厚や材料サイズを統一するメリット

同じ装置内で、板厚や材料サイズを統一するとメリットがあります。

たとえば、ブラケット類の板厚をt6に統一する。
カバー類をt2またはt3に統一する。
フレーム材を□40角パイプに統一する。
スペーサ類の外径をそろえる。

このように材料サイズをそろえると、

  • 材料手配がしやすい
  • 加工条件をそろえやすい
  • 部品管理がしやすい
  • 見積がしやすい
  • 端材を活用しやすい
  • 設計変更時に対応しやすい

といったメリットがあります。

もちろん、すべてを同じ材料にする必要はありません。

しかし、似た用途の部品では、材料サイズを統一することで製作が楽になる場合があります。

設計時には、部品単体だけでなく、装置全体で材料を見渡すことも大切です。


標準材を使うと図面も分かりやすくなる

標準材を意識すると、図面も分かりやすくなります。

たとえば、角パイプ、フラットバー、アングル材などを使う場合、材料名やサイズを明確に指示できます。

製作側も、どの材料を使うのか判断しやすくなります。

一方で、材料形状があいまいな図面では、

「これは板から切り出すのか」
「フラットバーを使うのか」
「角材から削るのか」
「全面加工が必要なのか」
「黒皮のままでよいのか」

といった確認が必要になります。

図面では、必要に応じて、

  • 材質
  • 板厚
  • 鋼材サイズ
  • 標準材の種類
  • 加工面
  • 黒皮可否
  • 表面処理

を分かりやすく示します。

標準材を使う設計は、加工者にとっても意図が伝わりやすい図面になります。


標準材を使えば必ず安いとは限らない

標準材を使うことは重要ですが、標準材を使えば必ず安くなるとは限りません。

たとえば、標準材を使っても、加工量が多すぎれば加工費は上がります。

また、標準材に合わせるために部品が大きくなりすぎると、重量やスペースに問題が出ることがあります。

さらに、標準材をそのまま使うことで、必要な精度が出ない場合もあります。

大切なのは、
標準材を使うこと自体を目的にしない
ことです。

設計では、

機能を満たす
加工しやすい
材料が手配しやすい
コストと納期に無理がない

というバランスを取る必要があります。

標準材は、そのバランスを取りやすくするための選択肢です。


材料取りが悪い設計の例

材料取りが悪い設計には、いくつかの特徴があります。

たとえば、

  • 標準材から少しだけ外れた寸法になっている
  • 余分に削る量が多い
  • 板厚が中途半端
  • 部品ごとに材質や板厚がばらばら
  • 大きなブロックからほとんど削り落とす形状
  • 小さな部品なのに特殊材を指定している
  • 長尺部品が中途半端な長さで端材が多い
  • 全面加工が必要ないのに全面加工前提になっている

このような設計は、図面上では問題なく見えても、製作時にコストが上がりやすくなります。

設計者は、形状を決めたあとに一度、

この部品はどの材料から作るのか
無駄に削っていないか
標準材に合わせられないか

を確認するとよいです。


加工者や材料屋に相談する

材料取りや標準材の判断に迷った場合は、加工者や材料屋に相談することも大切です。

特に初心者のうちは、どの材料サイズが流通しやすいのか、どの寸法なら加工しやすいのかを判断しにくいことがあります。

加工者に相談すると、

「この幅ならフラットバーが使えます」
「この板厚なら在庫があります」
「この寸法だと一回り大きな材料になります」
「ここを少し小さくできれば材料取りが良くなります」
「この形なら製缶にした方が安いかもしれません」

といった意見をもらえることがあります。

設計者が材料の流通状況をすべて覚える必要はありません。

しかし、材料取りの視点を持って相談できるようになると、加工者とのやり取りがスムーズになります。


初心者が確認したいポイント

材料取りと標準材を考えるときは、次のような内容を確認するとよいです。

  • その部品はどの材料から作るのか
  • 標準材に近い寸法になっているか
  • 板厚は流通しやすい寸法か
  • 丸棒や角材の標準寸法に合わせられないか
  • フラットバーや角パイプを使えないか
  • 材料を削りすぎる形状ではないか
  • 端材が多く出る寸法ではないか
  • 部品ごとに材質や板厚がばらばらになっていないか
  • 同じ用途の部品で材料を統一できないか
  • 特殊材を使う理由はあるか
  • 材料の入手性に問題はないか
  • 全面加工が本当に必要か
  • 標準材を使うことで機能に問題が出ないか
  • 加工者に相談すべき寸法ではないか

材料取りは、図面の見た目だけでは分かりにくい部分です。

しかし、製作費や納期には大きく影響します。


まとめ

材料取りとは、部品をどの材料から、どのように切り出して作るかを考えることです。

標準材とは、一般的に流通している板材、丸棒、角材、フラットバー、角パイプ、アングル材などのことです。

材料取りや標準材を意識せずに設計すると、

材料費が高くなる
加工量が増える
端材が増える
納期が長くなる
見積金額が上がる

ことがあります。

一方で、標準材をうまく使うと、

材料手配がしやすい
加工しやすい
コストを抑えやすい
図面意図が伝わりやすい
装置全体の材料管理がしやすい

というメリットがあります。

良い設計とは、CAD上で形が成立しているだけの設計ではありません。

必要な機能を満たしながら、材料を無駄なく使い、作りやすい形にする設計

です。

初心者のうちは、図面を描いたあとに一度、
この部品はどの材料から作るのか
と考える習慣を持つとよいです。

次回は、
「加工基準を考えた寸法の入れ方」
について解説します。