はじめに

機械設計では、板金部品を使う場面が多くあります。

たとえば、

  • カバー
  • ブラケット
  • 取付プレート
  • センサーステー
  • 電装ボックス
  • 安全カバー
  • シュート
  • ダクト
  • 架台まわりの小物部品

などです。

板金部品は、薄い金属板を切ったり、曲げたり、穴をあけたりして作ります。

切削加工のように、ブロック材を削って形を作る加工とは考え方が違います。

初心者のうちは、

「薄い板だから簡単に作れる」
「曲げれば形になる」
「穴をあけて曲げるだけだから安い」
「CADで曲がっていれば製作できる」

と考えてしまうことがあります。

しかし実務では、板金加工にも多くの注意点があります。

板厚、曲げR、曲げ順序、穴位置、曲げ逃げ、展開形状、バリ、表面処理、組立方法などを考える必要があります。

今回は、機械設計初心者向けに
「板金加工の基本|切る・曲げる・穴をあける」
について解説します。


板金加工とは何か

板金加工とは、金属の板材を使って部品を作る加工です。

主な加工内容は、

  • 切断する
  • 穴をあける
  • 曲げる
  • 切欠きを作る
  • タップを立てる
  • 溶接する
  • 表面処理する

などです。

切削加工では、材料を削って形を作ります。

一方、板金加工では、板を切り出して、必要な形に曲げて作ることが多いです。

そのため、板金部品では
展開した状態
を考えることが重要になります。

完成形ではL字やコの字に見える部品でも、加工前は1枚の平らな板です。

設計者は、完成形だけでなく、
この部品は平らな板からどう切り出して、どう曲げるのか
を想像する必要があります。


板金加工で作りやすい部品

板金加工で作りやすいのは、板材の特徴を活かした部品です。

たとえば、

  • 一定板厚の部品
  • 曲げ回数が少ない部品
  • 単純なL字ブラケット
  • コの字形状のカバー
  • 平板に穴をあけた取付板
  • 軽量なカバー
  • 面で囲うような部品

などです。

板金加工は、薄い板を使うため、軽く作りやすいという特徴があります。

また、カバーや保護部品のように、広い面を持つ部品にも向いています。

切削で大きなカバーを作ろうとすると、材料費も加工費も高くなります。

しかし板金で作れば、軽く、比較的安く作れる場合があります。

板金加工は、
薄く広い面を作るのが得意な加工
と考えるとわかりやすいです。


板厚を決めることが設計の出発点

板金部品では、板厚を決めることが重要です。

板厚によって、強度、剛性、重量、加工性、曲げやすさが変わります。

たとえば、薄い板は軽くて曲げやすいですが、たわみやすくなります。

厚い板は強くなりますが、重くなり、曲げにくくなります。

板厚を決めるときは、

  • どれくらいの荷重を受けるか
  • 手で触れるカバーなのか
  • 部品を支えるブラケットなのか
  • 曲げで剛性を出せるか
  • ボルト締結に耐えられるか
  • タップを立てる必要があるか
  • 重量を抑えたいか

を考えます。

初心者のうちは、なんとなく板厚を決めてしまうことがあります。

しかし板厚は、板金部品の性能と加工性を左右する基本条件です。


切る加工|外形と切欠きを作る

板金加工では、まず板材を必要な形に切ります。

切断方法には、レーザー加工、タレパン加工、シャーリング、ワイヤーカットなどがあります。

実務では、レーザー加工で外形や穴を切り出すことも多いです。

切る加工では、

  • 外形形状
  • 穴位置
  • 長穴
  • 切欠き
  • 曲げ逃げ
  • スリット
  • 角部形状

などを作ります。

ここで注意したいのは、板金部品は切断面にバリや熱影響が出る場合があることです。

特に作業者が触れるカバーや、ワークに近い部品では、切断面のバリ取りや面取りを考える必要があります。

また、細すぎる切欠きや小さすぎるスリットは、加工しにくい場合があります。

切削加工と同じように、板金加工でも
細かすぎる形状は加工負担になる
ことを意識しておきましょう。


穴をあける加工|ボルト穴・長穴・タップ穴

板金部品には、穴加工が多く入ります。

代表的なのは、

  • ボルト通し穴
  • 長穴
  • タップ穴
  • 配線穴
  • センサー取付穴
  • 軽量化穴
  • 曲げ逃げ穴
  • 位置決め穴

などです。

板金の穴で注意したいのは、板厚が薄いことです。

ボルトを通す穴であれば問題ない場合が多いですが、タップ穴では板厚が足りないことがあります。

薄板に直接タップを立てても、ねじのかかり代が不足しやすくなります。

その場合は、

  • ナットを使う
  • 溶接ナットを使う
  • 圧入ナットを使う
  • バーリング加工を使う
  • 厚板部品を追加する

といった方法を検討します。

板金部品では、
穴があけられること

その穴が締結として成立すること
を分けて考える必要があります。


曲げ加工|板を立体形状にする

板金加工の大きな特徴が曲げ加工です。

平らな板を曲げることで、L字、コの字、箱形状などを作ります。

曲げを入れると、平板よりも剛性が上がります。

たとえば、ただの薄い板はたわみやすいですが、端部を曲げるだけでかなりしっかりします。

カバーやブラケットでは、曲げをうまく使うことで、板厚を増やさずに剛性を上げることができます。

ただし、曲げ加工には制約があります。

  • 曲げRが必要
  • 曲げ方向を考える必要がある
  • 曲げ順序がある
  • 工具が入る必要がある
  • 曲げ部の近くに穴を置くと変形しやすい
  • 曲げ同士が干渉する場合がある

CAD上で形ができていても、実際に曲げられるとは限りません。

設計者は、曲げ加工の順序や工具の逃げを意識することが大切です。


曲げRを考える

板金を曲げると、曲げ部分にはRが付きます。

完全な直角に折れるわけではありません。

曲げ部分の内側には、板厚や加工条件に応じた内Rができます。

初心者のうちは、CAD上で曲げ部を鋭い直角に見せてしまうことがあります。

しかし実際の板金部品では、曲げRを考える必要があります。

曲げRは、

  • 板厚
  • 材質
  • 曲げ方法
  • 金型
  • 曲げ角度

によって変わります。

曲げRを無視すると、相手部品との干渉や寸法ズレの原因になることがあります。

特に、曲げ部の内側に相手部品が入る場合や、曲げ部の近くに穴や切欠きがある場合は注意が必要です。


曲げると寸法が変わることを理解する

板金部品では、曲げることで寸法の考え方が変わります。

平らな板を曲げると、内側は縮み、外側は伸びます。

そのため、完成寸法から展開寸法を考える必要があります。

実際の展開寸法は、板厚、曲げR、材質、曲げ条件によって変わります。

設計者がすべての展開計算を細かく行う必要があるとは限りません。

しかし、板金部品では
完成形と展開形状は同じではない
ということを理解しておく必要があります。

特に、曲げが多い部品や、寸法精度が必要な部品では注意が必要です。

曲げ加工後の寸法は、切削部品の寸法とは違う考え方になります。


曲げ部の近くに穴を置くと変形しやすい

板金設計で初心者が注意したいのが、曲げ部の近くの穴です。

穴が曲げ線に近すぎると、曲げ加工時に穴が引っ張られて変形することがあります。

丸穴が楕円になったり、長穴がゆがんだり、穴位置がずれたりする場合があります。

特に、

  • 曲げ線のすぐ近くの穴
  • 大きな穴
  • 長穴
  • 角穴
  • 切欠き
  • タップ穴

は注意が必要です。

どうしても曲げ部の近くに穴が必要な場合は、加工方法や曲げ順序を確認する必要があります。

設計時には、

その穴は曲げで変形しない位置にあるか
曲げ後に穴加工した方がよいか
穴位置を少し離せないか

を考えることが大切です。


曲げ逃げが必要な場合がある

板金部品では、曲げ部分に逃げ形状が必要になることがあります。

曲げ逃げとは、曲げ加工時に材料が干渉したり、割れたり、変形したりしないように設ける切欠きや逃げ穴のことです。

たとえば、曲げ線が切欠きや段差に近い場合、曲げ部分の端部に応力が集中しやすくなります。

そのまま曲げると、割れや変形の原因になる場合があります。

曲げ逃げを入れることで、曲げ加工が安定しやすくなります。

ただし、逃げを大きくしすぎると、強度や見た目に影響します。

設計時には、

曲げ部に無理な形状がないか
曲げ逃げが必要ではないか
逃げ形状で強度を落としすぎないか

を確認します。

曲げ逃げについては、次回の「板金曲げで注意したい穴位置と曲げ逃げ」で詳しく扱います。


曲げ順序を考える

板金部品では、曲げる順序が重要になる場合があります。

たとえば、箱形状や複数回曲げる部品では、先に曲げてしまうと次の曲げで工具が入らなくなることがあります。

また、曲げた部分同士が干渉して、最後まで曲げられない場合もあります。

CADではすべての曲げが同時に成立しているように見えます。

しかし実際の加工では、1曲げずつ順番に曲げていきます。

設計者は、

どの順番で曲げるのか
曲げ工具が入るのか
曲げたあとに他の部分が干渉しないか
箱形状になって閉じてしまわないか

を考える必要があります。

特に、コの字形状や箱形状では、曲げ順序と工具干渉に注意が必要です。


板金部品は軽いが、たわみに注意する

板金部品は軽く作れることが大きなメリットです。

しかし、薄い板はたわみやすいという特徴もあります。

たとえば、大きなカバーや長いブラケットを薄板で作ると、手で押しただけでたわむことがあります。

センサーやスイッチを取り付けるステーがたわむと、位置が安定しない場合もあります。

板金部品では、

  • 板厚を上げる
  • 曲げを入れる
  • リブを追加する
  • フランジを設ける
  • 補強板を追加する
  • 固定点を増やす

ことで剛性を上げられます。

板金設計では、材料を厚くするだけでなく、
曲げ形状で強くする
という考え方が重要です。


板金部品のタップは注意する

板金部品にタップ穴を設ける場合は注意が必要です。

薄い板では、ねじ山のかかり代が不足しやすいからです。

たとえば、板厚2mmの部品にM5タップを立てても、十分なねじ山が得られない場合があります。

軽いカバー固定であれば使えることもありますが、強く締める部分や荷重を受ける部分では不安があります。

板金でねじを使いたい場合は、

  • ナット止め
  • 溶接ナット
  • 圧入ナット
  • バーリングタップ
  • 別部品のタッププレート
  • スタッドボルト

などを検討します。

板金部品では、
薄板に直接タップを立てればよい
と考えないことが大切です。


バリとエッジ処理を考える

板金部品では、切断面や穴周辺にバリが出ることがあります。

特に、カバーや手で触れる部品では、鋭いエッジが残ると危険です。

また、ケーブル、ホース、チューブが近くを通る場合、板金のエッジで傷を付けることがあります。

設計時には、

  • 外周エッジ
  • 穴の周辺
  • 長穴の内側
  • 配線穴
  • 作業者が触れる部分
  • ワークに接触する部分

を確認します。

必要に応じて、バリ取り、面取り、R加工、保護ブッシュ、グロメットなどを使います。

板金部品は薄いため、エッジが鋭くなりやすいことを意識する必要があります。


表面処理も考える

板金部品では、表面処理を行うことが多くあります。

たとえば、

  • 塗装
  • メッキ
  • 黒染め
  • アルマイト
  • ユニクロメッキ
  • 三価クロメート
  • ステンレスの酸洗い

などです。

表面処理は、防錆、外観、安全性、耐摩耗性などに関係します。

屋外で使うのか。
水や油がかかるのか。
手で触れるのか。
食品や医療関係の設備なのか。
見える場所に使うのか。

こうした条件によって、必要な処理は変わります。

板金部品では、加工後に塗装やメッキをすることで寸法や穴の状態が変わることもあります。

特に、はめあい部やタップ穴では、表面処理の影響を考える必要があります。


板金部品と切削部品の使い分け

同じ部品でも、板金で作るか、切削で作るか迷うことがあります。

板金に向いているのは、

  • 薄く広い部品
  • 軽量なカバー
  • 曲げで剛性を出せる部品
  • 同じ板厚で構成できる部品
  • 多少の寸法ばらつきを許容できる部品

です。

一方、切削に向いているのは、

  • 厚みのある部品
  • 高い精度が必要な部品
  • はめあいや摺動部がある部品
  • 複雑な段差やポケットが必要な部品
  • 剛性が必要な小型部品

です。

板金で無理に高精度を求めると、かえって難しくなる場合があります。

逆に、切削で作る必要のないカバーを削り出すと、コストが高くなります。

設計者は、部品の役割に合わせて加工方法を選ぶことが大切です。


図面では曲げ方向と板厚を明確にする

板金図面では、曲げ方向や板厚が重要です。

完成形の図面だけでは、曲げ方向が分かりにくい場合があります。

特に、上下左右に曲げがある部品や、表裏が重要な部品では注意が必要です。

図面では、

  • 板厚
  • 材質
  • 曲げ方向
  • 曲げ角度
  • 曲げR
  • 穴位置
  • 表裏
  • 表面処理
  • バリ方向の注意
  • 重要寸法

を分かりやすく示す必要があります。

板金部品は、加工の流れを理解したうえで図面を描くと、製作側との認識違いを減らせます。


初心者が確認したいポイント

板金部品を設計するときは、次のような内容を確認するとよいです。

  • 板厚は用途に合っているか
  • 板金加工に向いた形状か
  • 曲げで剛性を出せないか
  • 曲げRを考えているか
  • 曲げ部の近くに穴が近すぎないか
  • 曲げ逃げが必要ではないか
  • 曲げ順序に無理がないか
  • 工具が入る形状か
  • 薄板タップに無理がないか
  • ナットや圧入ナットを使うべきではないか
  • バリやエッジでケガや傷が出ないか
  • 配線やチューブを傷つけないか
  • 表面処理は用途に合っているか
  • 切削部品で作るべき形状ではないか
  • 図面で曲げ方向や板厚が伝わるか

板金部品はシンプルに見えますが、加工の流れを考えると確認すべきポイントは多くあります。


まとめ

板金加工は、金属の板材を切り、穴をあけ、曲げて部品を作る加工です。

カバー、ブラケット、ステー、ダクト、シュート、電装部品など、機械設計では非常によく使われます。

板金加工では、

板厚
切断形状
穴加工
曲げR
曲げ順序
穴と曲げの距離
曲げ逃げ
薄板タップ
バリ取り
表面処理

を考える必要があります。

板金部品は、軽く、広い面を作りやすく、曲げを使って剛性を出せる便利な部品です。

しかし、CAD上で形が成立していても、実際に曲げられるか、穴が変形しないか、組立時に使いやすいかを考える必要があります。

良い板金設計とは、単に薄い板を曲げた設計ではありません。

板金加工の特徴を活かし、切る・曲げる・穴をあける流れまで考えた設計

です。

次回は、
「板金曲げで注意したい穴位置と曲げ逃げ」
について解説します。