はじめに
機械装置設計では、エア機器を使う場面が多くあります。
たとえば、
- エアシリンダでワークを押す
- クランプを開閉する
- ストッパを出し入れする
- リフタを上下させる
- エアブローでゴミを飛ばす
- 吸着パッドでワークを持つ
といった用途です。
エア機器は、比較的扱いやすく、装置設計でもよく使われます。
しかし、シリンダを選んで取り付ければ終わりではありません。
実務では、推力、速度、配管、電磁弁、スピードコントローラ、圧力、センサー、安全対策まで考える必要があります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「エア機器を使う装置設計の基本」
について解説します。
エア機器で何を動かすのかを整理する
エア機器を使うときは、まず
何を、どのように動かすのか
を整理します。
たとえば、同じエアシリンダでも、使い方によって選定条件は変わります。
- ワークを押す
- 部品を引く
- クランプする
- ストッパを出す
- カバーを開閉する
- 上下方向に持ち上げる
このように用途が違えば、必要な推力やストローク、速度、安全対策も変わります。
設計時には、
動かす対象の重量はどれくらいか
押す方向、引く方向、上下方向のどれか
必要なストロークはどれくらいか
どれくらいの力が必要か
動作速度は速い必要があるか
を確認します。
エア機器は便利ですが、目的を整理せずに選ぶと、推力不足や速度不安定、動作不良につながります。
まずは、エア機器に何をさせたいのかを明確にすることが大切です。
シリンダの推力を確認する
エアシリンダを使う場合は、推力を確認します。
シリンダの推力は、シリンダ径と使用圧力で大きく変わります。
同じシリンダでも、使用圧力が低ければ出せる力も小さくなります。
たとえば、カタログ値だけを見て選んでも、実際の使用圧力では力が足りないことがあります。
また、上下方向に持ち上げる場合は、ワークやユニットの重量だけでなく、ガイド抵抗や安全率も考える必要があります。
設計時には、
使用圧力はいくつか
必要な推力に対して余裕はあるか
押し側と引き側で推力差があるか
摩擦やガイド抵抗を考えているか
上下動作で落下や保持の問題はないか
を確認します。
シリンダは、動けばよいのではなく、必要な力を安定して出せることが重要です。
シリンダに横荷重をかけない
エアシリンダを使うときに注意したいのが、横荷重です。
エアシリンダは、基本的にロッド軸方向へ押したり引いたりする部品です。
ロッドに横方向の力がかかる使い方は避ける必要があります。
たとえば、相手部品の動きとシリンダの中心がずれていると、ロッドがこじれます。
また、ガイドなしで重い部品をシリンダロッドだけで支えると、ロッドに無理な力がかかります。
設計時には、
シリンダの中心と動作方向は合っているか
ロッドに横荷重がかからないか
必要に応じてガイドを設けているか
フローティングジョイントを検討しているか
を確認します。
シリンダは、力を出す部品です。
ワークやユニットの姿勢を支える役割までシリンダに持たせすぎないことが大切です。
速度調整を考える
エアシリンダは、速度調整も重要です。
速度が速すぎると、停止時に衝撃が大きくなります。
逆に遅すぎると、サイクルタイムが長くなります。
一般的には、スピードコントローラを使って、シリンダの速度を調整します。
ただし、速度調整は、スピコンを付ければ終わりではありません。
設計時には、
どのくらいの速度で動かしたいか
停止時の衝撃は問題ないか
スピコンの調整つまみに手が届くか
配管の向きは調整しやすいか
速度を上げたときにワークがずれないか
を確認します。
特に重いものを動かす場合や、ストロークが長い場合は、クッションやショックアブソーバの検討も必要です。
速度調整は、装置の動作安定性と安全性に関わる重要な部分です。
電磁弁と配管の配置を考える
エアシリンダを動かすには、電磁弁や配管が必要です。
機械設計では、シリンダ本体の配置だけでなく、電磁弁、スピコン、継手、エアチューブの取り回しも考える必要があります。
たとえば、
- シリンダのポートに継手が付くか
- チューブの曲げに無理がないか
- 可動部にチューブが引っかからないか
- スピコンを調整できる向きになっているか
- 電磁弁ボックスやマニホールドを置く場所があるか
といった内容です。
配管スペースを考えていないと、組立時に継手が周辺部品と干渉したり、チューブが急に曲がったりします。
設計時には、
継手を取り付けるスペースはあるか
チューブの曲げ半径に無理はないか
可動部と干渉しないか
調整や交換がしやすいか
を確認します。
エア機器は、機器本体だけでなく、配管まで含めて設計することが大切です。
センサーと動作確認を考える
エアシリンダを使う場合、シリンダの前進端や後退端を確認することがあります。
マグネットスイッチやリミットスイッチを使って、シリンダが目的の位置まで動いたかを確認します。
ただし、シリンダ端を確認しただけでは、ワークが正しく動いたとは限りません。
たとえば、ワークがない状態でもシリンダは前進端まで動くことがあります。
また、ワークが途中で引っかかっていても、シリンダだけは端まで動く場合があります。
設計時には、
シリンダ位置だけ確認すればよいのか
ワークの有無や位置確認も必要か
クランプ完了を何で判断するか
異常時にどこで止めるか
を考えます。
エア機器の動作確認は、動作フローとセットで整理することが大切です。
エア圧低下や非常停止時を考える
エア機器を使う装置では、エア圧が下がったときや、非常停止したときの状態も考える必要があります。
たとえば、エア圧が抜けたときにクランプが外れると、ワークが落下する可能性があります。
昇降シリンダの場合、エア圧低下でユニットが下がる危険もあります。
非常停止時にシリンダがどの状態で止まるのかも重要です。
設計時には、
エア圧が下がったときに危険はないか
ワークやユニットが落下しないか
非常停止時に安全な状態になるか
残圧でシリンダが動かないか
メンテナンス時にエアを抜いても安全か
を確認します。
必要に応じて、メカストッパ、落下防止、ロック機構、残圧抜き、レギュレータ、圧力スイッチなどを検討します。
エア機器は、正常に動くときだけでなく、止まったときの安全も考えることが大切です。
エア機器チェックリスト
エア機器を使う装置を設計するときは、次の内容を確認するとよいです。
1. 使用目的
- エア機器で何を動かすか明確になっている
- 必要なストロークを確認している
- 動かす対象の重量を把握している
- 動作方向を確認している
2. シリンダ選定
- 使用圧力を確認している
- 必要推力に対して余裕がある
- 押し側・引き側の推力差を確認している
- ロッドに横荷重がかからない構造になっている
- 必要に応じてガイドやジョイントを検討している
3. 速度・停止
- 動作速度が適切である
- スピードコントローラを調整できる
- 停止時の衝撃を考えている
- 必要に応じてクッションやショックアブソーバを検討している
4. 配管・機器配置
- 継手を取り付けるスペースがある
- チューブの曲げに無理がない
- 可動部にチューブが干渉しない
- 電磁弁やマニホールドの配置を考えている
- メンテナンス時に交換しやすい
5. 安全・異常時
- エア圧低下時の状態を考えている
- ワークやユニットが落下しない
- 非常停止時に危険な動作をしない
- 残圧でシリンダが動かないように考えている
- メンテナンス時に安全にエアを抜ける
まとめ
エア機器は、機械装置設計でよく使われる便利な部品です。
しかし、シリンダを選んで取り付けるだけでは、良い設計とは言えません。
エア機器を使う装置設計では、
何を動かすのか
必要な推力は足りるか
横荷重をかけていないか
速度調整はできるか
配管や電磁弁の配置に無理はないか
センサーで何を確認するか
エア圧低下や非常停止時に安全か
を考える必要があります。
良いエア機器設計とは、ただシリンダが動く設計ではありません。
必要な力で安定して動き、調整しやすく、配管しやすく、異常時にも安全な設計
です。
初心者のうちは、エアシリンダを配置したあとに、
推力、横荷重、速度調整、配管スペース、非常停止時の状態
を確認する習慣を持つことをおすすめします。
次回は、
「モーター・減速機を使うときの基本」
について解説します。
