溶接構造で寸法を入れる場所に注意する
溶接部品の図面では、寸法が正しく入っていても、どこを基準にしているかによって仕上がりが変わります。
溶接では熱によるひずみが発生するため、機械加工品と同じ感覚で寸法を入れると、製作や検査が難しくなることがあります。
今回は、溶接構造の図面で確認したい寸法記入のポイントを解説します。
溶接前と溶接後では寸法が変わる
溶接では、材料を加熱して接合します。
加熱された部分は膨張し、冷えると収縮するため、次のような変形が起こることがあります。
- フレームが反る
- プレートが傾く
- 対角寸法がずれる
- 穴位置がずれる
- 全長や全幅が縮む
そのため、すべての寸法を厳しく指定しても、溶接だけで正確に仕上げるのが難しい場合があります。
図面チェックでは、まず溶接後に本当に必要な寸法はどれかを整理しましょう。
基準にする面や位置を決める
溶接構造では、寸法の基準がバラバラだと組立時の位置が安定しません。
例えば、フレームに複数の取付板を溶接する場合、それぞれを別の端面から寸法指定すると、誤差が積み重なることがあります。
チェックするときは、次の点を確認します。
- どの面を組立基準にするか
- どの端面から位置を決めるか
- 中心線を基準にした方がよいか
- 相手部品との取付面はどこか
- 検査時に基準を再現できるか
特に重要な取付面や穴位置は、できるだけ同じ基準から寸法を入れるとわかりやすくなります。
素材寸法と完成寸法を区別する
溶接構造図では、切断する材料の寸法と、溶接後の完成寸法が混在することがあります。
例えば、角パイプの長さと、完成したフレームの全長が同時に記載されている場合です。
これらの寸法にわずかな違いがあると、どちらを優先するのか加工者が迷います。
図面チェックでは、
- 部材単体の切断寸法
- 部材同士の配置寸法
- 溶接後の完成寸法
- 機械加工後の仕上がり寸法
を区別して確認します。
完成寸法を優先する場合は、その意図が図面から読み取れることが大切です。
溶接ビードをまたいだ寸法に注意する
溶接部の近くでは、ビードの盛り上がりやひずみによって測定しにくいことがあります。
例えば、溶接ビードをまたいでノギスを当てるような寸法は、正確に確認できない可能性があります。
次のような寸法には注意が必要です。
- 溶接部から溶接部までの寸法
- ビード付近を基準にした寸法
- 変形しやすい板端からの寸法
- 小さな溶接部品の傾きを管理する寸法
重要な寸法は、できるだけ安定した面や穴を基準にすると測定しやすくなります。
寸法公差が厳しすぎないか
溶接構造では、切削加工品と同じ精度をそのまま求めるのが難しい場合があります。
特に、大きなフレームや薄板構造では、溶接ひずみの影響が大きくなります。
図面チェックでは、
- その公差が組立上本当に必要か
- 溶接だけで確保できる精度か
- 矯正作業が必要になるか
- 溶接後の機械加工が必要か
- 長穴などで調整できないか
を確認します。
精度が必要な部分だけを重点的に管理することで、製作の難しさやコストを抑えられます。
重要な穴は後加工も検討する
溶接前に穴を加工しても、溶接ひずみによって位置がずれることがあります。
特に、次のような穴は注意が必要です。
- ベアリング取付穴
- 位置決めピン穴
- 複数部品を貫通するボルト穴
- 軸の中心を決める穴
- 高い位置精度が必要な取付穴
高精度が必要な場合は、溶接後に穴加工や仕上げ加工を行う方法があります。
図面では、溶接前に加工するのか、溶接後に加工するのかがわかるようにしておくことが大切です。
相手部品との取付寸法を優先する
溶接構造では、すべての寸法を均等に厳しく管理するよりも、相手部品と取り合う寸法を優先することが重要です。
例えば、
- 据付用の取付穴
- モーターの取付面
- ガイドやレールの取付位置
- 他のフレームとの接続面
- 装置全体の基準高さ
などです。
外形が多少変形しても、取付位置が正しければ問題なく使用できる場合があります。
図面チェックでは、どの寸法を守れば装置として機能するかを考えましょう。
溶接構造図の簡単なチェック手順
溶接構造の寸法は、次の順番で確認すると見落としを減らせます。
1. 組立や据付の基準面を確認する
2. 部材寸法と完成寸法を区別する
3. 寸法の基準が途中で変わっていないか見る
4. 溶接後に測定できる寸法か確認する
5. 公差が必要以上に厳しくないか見る
6. 重要な穴や面に後加工が必要か確認する
7. 相手部品との取付寸法を照合する
まとめ
溶接構造では、寸法が記載されているだけでは十分ではありません。
特に確認したいポイントは次の通りです。
- 溶接後のひずみを考慮しているか
- 基準面や基準位置が明確か
- 素材寸法と完成寸法が区別されているか
- 溶接後に測定できる指示か
- 公差が加工方法に合っているか
- 重要な穴や面に後加工が必要ではないか
溶接図面の寸法は、すべてを厳しく管理するのではなく、機能上重要な場所を明確にすることが大切です。
組立基準や取付位置を意識して寸法を整理することで、溶接ひずみによる手戻りや現場での判断ミスを減らせます。
