はじめに
機械装置設計では、機械部品だけで装置が動くわけではありません。
実際の装置では、制御盤、センサー、モーター、エア機器、配線、操作ボタン、非常停止などが組み合わさって動きます。
そのため、機械設計者は、制御・電気設計者に伝わる形で設計内容を整理することが大切です。
たとえば、
- 装置がどの順番で動くのか
- どこにセンサーが必要か
- 何を確認してから次の動作へ進むのか
- エアシリンダやモーターはどこに付くのか
- 配線や配管をどこへ通すのか
- 操作盤や非常停止はどこに必要か
このような情報があいまいだと、制御設計や配線作業で手戻りが発生しやすくなります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「制御・電気設計者に伝わる機械設計」
について解説します。
機械の動作順序を伝える
制御設計者にとって重要なのは、装置がどの順番で動くかです。
機械設計者が頭の中で動作を理解していても、それが図面や資料に表れていないと、制御側には伝わりません。
たとえば、ワークを押し込む装置であれば、
- ワークをセットする
- ワーク有無を確認する
- クランプする
- クランプ完了を確認する
- 押込みシリンダが前進する
- 前進端を確認する
- 押込みシリンダが後退する
- クランプを解除する
- ワークを取り出す
というように、動作順序を整理しておくと伝わりやすくなります。
設計時には、
何を確認してから動くのか
どの動作が完了したら次へ進むのか
異常時はどこで止めるのか
を明確にします。
動作順序が整理されていると、制御設計者もプログラムやI/O構成を考えやすくなります。
センサーの役割を明確にする
センサーを配置するときは、
何を確認するためのセンサーなのか
を明確にしておく必要があります。
同じように見えるセンサーでも、役割は違います。
たとえば、
- ワーク有無確認
- ワーク位置確認
- ワーク浮き確認
- シリンダ前進端確認
- シリンダ後退端確認
- カバー閉確認
- 排出完了確認
- 原位置確認
などです。
センサーの役割があいまいだと、制御側で
「この信号を何の条件に使うのか」
が分かりにくくなります。
また、センサー位置だけ図面に描かれていても、何を見ているのか分からない場合があります。
設計時には、
センサー名称
検出対象
検出したい状態
検出後の動作
調整方向
を簡単にメモしておくとよいです。
たとえば、図面やメモに
「ワーク有無確認用」
「クランプ完了確認用」
「排出確認用」
と書いておくだけでも、伝わりやすくなります。
エア機器の動作と状態を伝える
エアシリンダや電磁弁を使う装置では、エア機器の動作状態も伝える必要があります。
機械設計側では、シリンダを配置して終わりに見えても、制御側では
- どのシリンダが前進するのか
- どのタイミングで後退するのか
- 前進端を確認するのか
- 後退端を確認するのか
- エア圧低下時にどうするのか
- 非常停止時にどう止めるのか
を考える必要があります。
設計時には、
シリンダ名称
動作方向
前進時の目的
後退時の状態
端位置確認の有無
スピコンや配管の調整位置
を整理します。
たとえば、
「クランプシリンダ:前進でワーク押さえ、後退で解除」
「押込みシリンダ:前進で部品挿入、前進端確認後に後退」
というように書いておくと、制御側に伝わりやすくなります。
エア機器は、機械側の動作と制御側の信号が密接に関係します。
モーターや駆動部の条件を伝える
モーターやサーボ、インバータを使う場合は、動作条件を制御・電気設計者へ伝える必要があります。
たとえば、コンベヤを動かすだけでも、
- どの方向へ回すのか
- 速度調整が必要か
- 連続運転か、間欠運転か
- 起動と停止のタイミング
- 非常停止時の止まり方
- 正転・逆転が必要か
- 位置決めが必要か
といった情報が必要です。
サーボモーターやステッピングモーターを使う場合は、さらに位置決め条件が重要になります。
設計時には、
移動距離や回転角度
必要速度
停止位置
原点復帰の方法
センサー確認の有無
ブレーキの必要性
を整理します。
機械設計者が「このくらい動けばよい」と考えていても、制御側では数値や条件が必要になります。
モーター駆動では、動作イメージをできるだけ具体的に伝えることが大切です。
配線・配管ルートを考える
機械設計では、部品が干渉しないことだけでなく、配線や配管を通す場所も考える必要があります。
センサーやモーター、電磁弁、操作盤には、ケーブルが必要です。
エアシリンダや吸着パッドには、エアチューブが必要です。
これらのルートを考えていないと、
- ケーブルが可動部に近い
- チューブの曲げがきつい
- カバーを外すと配線も引っ張られる
- センサー交換時にケーブルを抜きにくい
- 制御盤までの引き回しが長くなる
といった問題が起こります。
設計時には、
ケーブルやチューブをどこに通すか
固定する場所はあるか
可動部と干渉しないか
曲げ半径に無理はないか
交換時に外しやすいか
を確認します。
配線・配管は、後から何とかなると思われがちですが、実際には装置の使いやすさに大きく影響します。
操作盤・非常停止の位置を考える
操作盤や非常停止ボタンの位置も、機械設計で早めに考えておく必要があります。
操作盤は、作業者が見やすく、操作しやすい位置に配置します。
非常停止ボタンは、危険を感じたときにすぐ押せる位置に必要です。
設計時には、
作業者はどこに立つか
操作ボタンに自然に手が届くか
表示ランプや画面が見えるか
非常停止ボタンをすぐ押せるか
カバーや扉の開閉を邪魔しないか
を確認します。
装置の機構が決まった後に操作盤の場所を考えると、取り付けにくい位置しか残っていないことがあります。
操作盤や非常停止は、装置レイアウトの一部として早めに考えることが大切です。
図面だけでなくメモも有効
制御・電気設計者に情報を伝えるとき、すべてを正式な図面だけで表現しようとすると大変です。
構想段階や打ち合わせ段階では、簡単なメモや動作表でも十分に役立ちます。
たとえば、
- 動作フロー
- センサー一覧
- シリンダ一覧
- モーター一覧
- I/Oの簡易メモ
- 配線・配管の注意点
- 異常時の停止条件
- 未決定事項のリスト
などです。
完璧な資料でなくても、機械設計者の考えが整理されていれば、制御側との会話がしやすくなります。
特に、
まだ決まっていないこと
を明確にしておくことも重要です。
不明点をそのままにして進めるより、確認事項として残しておく方が、後の手戻りを減らしやすくなります。
制御・電気設計者に伝えるチェックリスト
制御・電気設計者へ情報を伝えるときは、次の内容を確認するとよいです。
1. 動作順序
- 装置の1サイクルの流れを整理している
- どの確認後に次の動作へ進むか決めている
- 原位置や完了位置を考えている
- 異常時に止める条件を整理している
2. センサー
- センサーの役割を明確にしている
- 検出対象を決めている
- センサー名称を整理している
- 調整方向や取付位置を考えている
- 誤検出しやすい場所を避けている
3. エア機器
- シリンダの動作方向を整理している
- 前進端・後退端確認の有無を決めている
- 電磁弁やマニホールドの配置を考えている
- スピコンの調整位置に手が届く
4. モーター・駆動部
- 回転方向や移動方向を伝えられる
- 必要な速度や移動量を整理している
- 原点復帰や停止位置を考えている
- ブレーキや非常停止時の状態を検討している
5. 配線・操作系
- 配線・配管ルートを考えている
- 可動部にケーブルやチューブが近すぎない
- 操作盤の位置を決めている
- 非常停止ボタンの位置を考えている
- 未決定事項や確認事項を整理している
まとめ
機械装置は、機械設計だけで完成するものではありません。
制御・電気設計者に、装置の動作やセンサーの役割、エア機器やモーターの条件、配線・配管の考え方が伝わって初めて、装置として成立します。
制御・電気設計者に伝わる機械設計では、
動作順序
センサーの役割
エア機器の動作
モーターや駆動部の条件
配線・配管ルート
操作盤や非常停止の位置
未決定事項の整理
を意識することが大切です。
良い機械設計とは、部品形状ができているだけではありません。
制御・電気設計者が、装置の動きや必要な信号を理解しやすい設計
です。
初心者のうちは、図面を描くだけでなく、
このセンサーは何を見るのか、このシリンダはいつ動くのか、この動作の完了条件は何か
をメモとして残すことをおすすめします。
次回は、
「構想図から詳細設計へ進める手順」
について解説します。
