はじめに
機械装置設計では、最初に構想図を作り、装置全体の考え方を整理します。
構想図では、
- ワークの流れ
- 作業者の位置
- 必要な機構
- 装置のおおまかな大きさ
- 安全カバーの範囲
- シリンダやモーターの配置
- センサーの考え方
などを大まかに決めます。
しかし、構想図ができたからといって、そのまま製作できるわけではありません。
実際に製作するためには、構想図をもとに詳細設計へ進め、部品形状、購入品型式、取付方法、調整代、干渉、安全性、メンテナンス性を具体的に決めていく必要があります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「構想図から詳細設計へ進める手順」
について解説します。
構想図で決めた内容を確認する
詳細設計へ入る前に、まず構想図で決めた内容を確認します。
いきなり部品を細かく作り始めるのではなく、装置全体の方向性が合っているかを見直します。
確認したい内容は、次のようなものです。
- 装置の目的は明確か
- ワークの流れは成立しているか
- 作業者の位置は問題ないか
- 必要な機構は抜けていないか
- 安全カバーの考え方は合っているか
- 設置スペースに入るか
- メンテナンススペースはあるか
構想図の段階であいまいな部分が残っていると、詳細設計中に迷いや手戻りが出やすくなります。
特に、ワーク基準、動作順序、停止位置、安全対策は、詳細設計へ入る前に整理しておきたい部分です。
詳細設計は、構想図の考え方を具体化する作業です。
そのため、まずは構想図の前提条件を確認することが大切です。
装置をユニットごとに分ける
詳細設計では、装置全体をいきなり細かく作るよりも、ユニットごとに分けて考えると進めやすくなります。
たとえば、
- 架台ユニット
- 搬送ユニット
- 位置決めユニット
- クランプユニット
- 押込みユニット
- 昇降ユニット
- 回転ユニット
- カバーユニット
- 操作盤まわり
というように分けます。
ユニットごとに分けると、それぞれの役割が分かりやすくなります。
また、組立順序、メンテナンス、図面構成、部品表の整理もしやすくなります。
設計時には、
どこまでを1つのユニットにするか
ユニット同士の取合いはどこか
後から外す必要があるユニットはどれか
組立や搬入に無理のない大きさか
を確認します。
ユニット分けがうまくできると、詳細設計だけでなく、製作・組立・調整も進めやすくなります。
購入品を早めに決める
詳細設計では、購入品を早めに決めることが重要です。
購入品の寸法や仕様が決まらないと、周辺部品の設計も決まりません。
たとえば、
- エアシリンダ
- リニアガイド
- モーター
- 減速機
- センサー
- ベアリング
- カップリング
- コンベヤ
- アジャスタ
- キャスター
- トグルクランプ
などです。
購入品は、あとから型式を変えると、取付穴、全長、ストローク、配線位置、配管位置、カバー形状まで影響することがあります。
設計時には、
必要な能力を満たしているか
外形寸法と取付寸法は確認したか
CADデータは入手できるか
納期に問題はないか
メンテナンス時に再手配しやすいか
を確認します。
特に、納期が長い購入品や、装置全体寸法に影響する購入品は早めに確定した方がよいです。
購入品を先に決めることで、詳細設計の手戻りを減らしやすくなります。
取合い寸法を決める
詳細設計では、ユニット同士や部品同士の取合い寸法を決めていきます。
取合い寸法とは、部品同士が接続する部分の寸法や位置関係のことです。
たとえば、
- 架台にユニットを取り付ける位置
- ガイドとスライドプレートの位置
- シリンダとロッド先端金具の位置
- センサーと検出体の距離
- カバーとフレームの取付位置
- 前後工程との受け渡し高さ
などです。
取合いがあいまいなまま部品を作ると、組立時に穴が合わない、位置が出ない、調整できないという問題が起こります。
設計時には、
基準になる面や穴はどこか
取付穴の位置は合っているか
調整代は必要か
相手部品とのすき間は適切か
組立時に位置合わせできるか
を確認します。
詳細設計では、各部品の形状だけでなく、部品同士の関係を明確にすることが大切です。
干渉確認を繰り返す
詳細設計では、干渉確認を何度も行います。
CAD上で部品がきれいに配置されていても、実際には動作中に干渉することがあります。
確認したいのは、停止状態だけではありません。
- シリンダ前進時
- シリンダ後退時
- 昇降上端・下端
- 回転途中
- カバー開閉時
- ワーク投入時
- ワーク排出時
- メンテナンス時
といった状態を確認します。
特に可動部では、動いた途中の軌跡を見ることが重要です。
設計時には、
可動範囲全体で干渉しないか
ワークと機構が当たらないか
配線や配管が引っ張られないか
工具や手を入れるスペースはあるか
カバーを開けた状態で干渉しないか
を確認します。
干渉確認は、最後に一度だけ行うものではありません。
詳細設計中に何度も確認することで、手戻りを減らせます。
調整代と逃げを入れる
詳細設計では、現物のばらつきや組立誤差を考えて、調整代や逃げを入れることがあります。
装置は、すべての部品が理想寸法どおりに仕上がるわけではありません。
加工誤差、組立誤差、ワークばらつき、溶接ひずみ、現地据付誤差などがあります。
そのため、重要な部分には調整できる余地を持たせます。
たとえば、
- センサー取付を長穴にする
- ストッパ位置を調整式にする
- シムで高さ調整できるようにする
- ガイドに組立調整代を持たせる
- カバーに少し逃げを持たせる
といった方法です。
ただし、何でも長穴にすればよいわけではありません。
調整方向が合っていなかったり、調整後に固定できなかったりすると意味がありません。
設計時には、
どの方向に調整が必要か
調整量は足りるか
調整後にしっかり固定できるか
逃げを入れても機能に影響しないか
を確認します。
調整代と逃げは、現場で装置を成立させるための大切な設計要素です。
部品図化の前に見直す
詳細設計が進んできたら、部品図を作る前に全体を見直します。
部品図を作り始めてから大きな修正が入ると、修正範囲が広くなります。
そのため、できれば部品図化の前に、組立図や3Dモデル上で主要な確認を済ませておきます。
確認したい内容は、
- 動作は成立しているか
- 干渉はないか
- 購入品型式は確定しているか
- 調整代は入っているか
- ボルトや工具スペースはあるか
- メンテナンス時に外せるか
- 安全カバーは成立しているか
- 製作しにくい形状はないか
などです。
この段階で、加工者や組立者の目線でも見直せると、さらに良くなります。
部品図化は、詳細設計の最後に近い工程です。
その前に、装置として成立しているかを確認することが大切です。
構想図から詳細設計へ進めるチェックリスト
構想図から詳細設計へ進めるときは、次の内容を確認するとよいです。
1. 構想内容
- 装置の目的が明確になっている
- ワークの流れが成立している
- 動作順序が整理されている
- 安全対策の考え方が決まっている
- メンテナンススペースを考えている
2. ユニット分け
- 装置をユニットごとに分けている
- ユニット同士の取合いを決めている
- 組立順序に無理がない
- 後から外すユニットを考えている
3. 購入品
- 購入品の型式を早めに決めている
- 外形寸法・取付寸法を確認している
- CADデータを確認している
- 納期や入手性を確認している
4. 詳細確認
- 可動範囲全体で干渉確認している
- 配線・配管スペースを考えている
- 調整代や逃げを入れている
- 工具スペースを確認している
- 安全カバーや扉の開閉を確認している
5. 部品図化前
- 装置全体として動作が成立している
- 加工しにくい形状がないか確認している
- 組立・調整しやすい構造になっている
- メンテナンス時に外せる構造になっている
- 図面化する購入品・製作品が整理されている
まとめ
構想図から詳細設計へ進める段階では、装置の考え方を具体的な形にしていきます。
この段階で大切なのは、いきなり部品を細かく作り込むことではありません。
まず、構想図で決めた内容を確認し、装置をユニットごとに分け、購入品を決め、取合い寸法を整理しながら詳細を詰めていきます。
構想図から詳細設計へ進めるときは、
構想内容の確認
ユニット分け
購入品の選定
取合い寸法
干渉確認
調整代と逃げ
部品図化前の見直し
を意識することが大切です。
良い詳細設計とは、構想図をただ細かくしたものではありません。
製作でき、組み立てられ、調整でき、メンテナンスできる状態まで具体化した設計
です。
初心者のうちは、構想図から詳細設計へ進めるときに、まず
どのユニットから決めるか、どの購入品を先に決めるか、どこが取合いになるか
を書き出すことをおすすめします。
次回は、
「良い装置設計に共通する考え方」
について解説します。
