はじめに
機械設計では、カバー部品を設計する場面が多くあります。
たとえば、
- 安全カバー
- 点検カバー
- 防じんカバー
- 飛散防止カバー
- ベルトやチェーンの保護カバー
- センサーや配線の保護カバー
- 開閉扉付きのカバー
などです。
カバー部品は、装置の外側に付くことが多いため、簡単に考えてしまいがちです。
しかし実務では、作業者の安全、メンテナンス性、取付方法、開閉方向、強度、干渉、視認性などを考えないと、使いにくいカバーになります。
今回は、機械設計初心者向けに、
「カバー部品の設計で注意すること」
について解説します。
カバーの目的を確認する
カバー部品を設計するときは、まず目的を確認します。
同じカバーでも、目的によって設計の考え方は変わります。
たとえば、作業者が可動部に触れないようにする安全カバーと、切粉や粉じんを防ぐ防じんカバーでは、必要な形状や材質が違います。
点検用のカバーであれば、簡単に外せることが大切です。
飛散防止カバーであれば、強度やすき間の少なさが重要になります。
設計時には、
何から守るカバーなのか
誰を守るカバーなのか
中を見たいのか
頻繁に開閉するのか
工具を使って外すのか、手で開けるのか
を確認します。
カバーは、ただ囲うための部品ではありません。
目的に合わせて、形状や取付方法を決めることが大切です。
取外しやすさを考える
カバーは、メンテナンスや清掃のために外すことがあります。
そのため、取外しやすさを考えておく必要があります。
たとえば、小さな点検カバーを外すために、多くのボルトを外す必要があると作業性が悪くなります。
また、カバーを外す方向に周辺部品や配線があると、取り外せない場合があります。
設計時には、
カバーをどの方向に外すのか
工具は入るのか
ボルト本数は多すぎないか
一人で持てる重さか
外したカバーを置く場所に困らないか
を確認します。
カバーは、取り付いている状態だけでなく、外す作業まで想像して設計することが大切です。
開閉カバーは動く範囲を見る
扉のように開閉するカバーでは、開閉範囲の確認が重要です。
カバーを開けたときに、周辺部品、壁、フレーム、配管、配線などに当たることがあります。
また、開いた状態で作業者の邪魔になる場合もあります。
設計時には、
どちらに開くのか
開いたときに干渉しないか
必要な開口が確保できるか
開いた状態で保持できるか
閉じたときに確実に固定できるか
を確認します。
特に、現場では装置の周囲に壁や柱、他設備があることもあります。
CAD上の装置単体だけでなく、設置環境も考えることが大切です。
中が見える必要があるか考える
カバーには、中が見えた方がよい場合があります。
たとえば、ワークの有無、動作状態、異常の有無、センサーランプ、圧力計などを確認したい場合です。
このような場合は、透明カバーや点検窓を設けることがあります。
ただし、透明材を使う場合は、傷、汚れ、強度、薬品、熱の影響も考える必要があります。
また、点検窓の位置が悪いと、見たい部分が見えません。
設計時には、
何を見たいのか
どの方向から見るのか
作業者の目線に合っているか
汚れても確認できるか
透明材の強度は足りるか
を確認します。
点検窓は、付いていればよいのではなく、見たいものが見える位置にあることが重要です。
安全性を考える
カバー部品では、安全性が特に重要です。
カバーは、作業者を守るために設けることが多いからです。
たとえば、回転部、スライド部、チェーン、ベルト、シリンダ、挟まれやすい場所などは、作業者が触れないようにする必要があります。
また、作業者が触れる外側の角は、鋭くならないように面取りやバリ取りを考えます。
設計時には、
手や指が入るすき間はないか
可動部に触れない構造か
鋭い角やバリが残らないか
カバーを外した状態で危険がないか
必要ならインターロックが必要ではないか
を確認します。
安全カバーでは、見た目よりも、実際に危険を防げることが重要です。
取付剛性と振動を見る
カバーは薄板や樹脂板で作ることが多く、剛性が不足しやすい部品です。
剛性が不足すると、振動でビビリ音が出たり、開閉時にたわんだり、隙間が大きくなったりします。
特に、大きな面積のカバーや、片持ちで支えるカバーでは注意が必要です。
設計時には、
カバーが大きくたわまないか
振動で音が出ないか
取付点が少なすぎないか
必要なら折り曲げやフレームで補強するか
を確認します。
薄い板でも、曲げを入れたり、フレームを追加したりすると剛性を上げられる場合があります。
カバーは軽く作りたい部品ですが、使っていて不安定にならないことも大切です。
配線・配管との干渉に注意する
カバーの内側や周辺には、配線や配管が通ることがあります。
カバーを閉めたときに配線を挟んだり、配管を押したりすると、故障やエア漏れの原因になります。
また、カバーを外すときに、配線が引っかかることもあります。
設計時には、
カバーの内側に配線や配管がないか
開閉時に挟まないか
配線の曲げに無理がないか
ケーブルクランプや固定場所はあるか
を確認します。
カバーは外側の部品に見えますが、内側のスペースも重要です。
配線や配管の逃げまで考えておくと、組立やメンテナンスがしやすくなります。
初心者が確認したいポイント
カバー部品を設計するときは、次の内容を確認するとよいです。
- カバーの目的は明確か
- 何から、誰を守るカバーか
- 取外し方向に問題はないか
- 工具を入れるスペースはあるか
- ボルト本数は多すぎないか
- 開閉時に周辺部品と干渉しないか
- 開いた状態で保持できるか
- 中を見る必要があるか
- 点検窓の位置は適切か
- 手や指が入る危険なすき間はないか
- 角部の面取りやバリ取りは考えているか
- 振動やたわみは問題ないか
- 配線や配管を挟まないか
カバー部品は、見た目だけでなく、安全性と作業性を考えることが大切です。
まとめ
カバー部品は、機械設計でよく使う部品です。
単に装置を囲うだけでなく、
安全性
取外しやすさ
開閉しやすさ
点検しやすさ
剛性
配線・配管の逃げ
メンテナンス性
を考える必要があります。
良いカバー設計とは、ただ形が合っている設計ではありません。
作業者を守り、必要なときに開けやすく、点検や交換作業の邪魔にならない設計
です。
初心者のうちは、カバーを設計するときに、
何を守るためのカバーか、どう外すのか、開けたときに作業できるか
を確認する習慣を持つとよいです。
次回は、
「治具部品の設計で大切な考え方」
について解説します。
