はじめに
CADで部品を配置し、取付穴も問題なし。
ボルトの長さも確認し、周辺部品との干渉もありません。
ところが、いざ組み立てようとすると……
「六角レンチが入らない!」
機械設計では、このような失敗が意外と起こります。
今回は、ボルトの配置は問題ないのに、工具が入らず組み立てられない原因と、その改善方法を紹介します。
こんな失敗が起きる
例えば、ブラケットをベースプレートに六角穴付きボルトで固定する構造を考えてみます。
ボルトのすぐ上には、別のプレートが配置されています。
CAD上ではボルトとプレートが干渉していないため、問題ないように見えます。
しかし、実際に組み立てると、ボルトの頭と上側プレートの間隔が狭く、六角レンチを差し込めません。
また、レンチを差し込めても、回すスペースが足りず締め付けられない場合もあります。
ボルトが取り付くことと、工具で締め付けられることは別なのです。

なぜこの問題が起きるのか?
原因は、ボルト本体の干渉だけを確認していることです。
3D CADでは、ボルトやワッシャーを配置して干渉確認できます。
しかし、工具をモデル化していなければ、締付作業に必要なスペースまでは確認できません。
特に注意したいのは、次のような場所です。
- 深いザグリ穴の中にあるボルト
- フレームの内側に配置したボルト
- 周囲をプレートで囲まれた取付部
- 長い六角レンチを差し込めない場所
- スパナを振る角度が確保できない場所
ボルトの頭が見えていても、工具が使えるとは限りません。
どう改善すればよい?
改善方法はいくつかあります。
改善案①:ボルトの向きを変更する
工具を差し込みやすい方向からボルトを締められるように、取付方向を見直します。
例えば、上から締められない場合は、横方向から締める構造へ変更する方法があります。
ただし、変更後も必要な締結長さや強度を確保することが前提です。
改善案②:工具用の逃げを設ける
周辺プレートやブラケットに、工具を差し込むための逃げ穴や切欠きを設けます。
六角レンチを通す穴を追加するだけで、組立性が改善することもあります。
ただし、逃げ加工によって部品の剛性や強度が不足しないように注意が必要です。
改善案③:締結方法を見直す
どうしても工具スペースが確保できない場合は、締結方法そのものを見直します。
例えば、
- ボルト位置を変更する
- 締結する部品の形状を変更する
- ナット側から作業できる構造にする
- 先に締め付けてからユニットを取り付ける
といった方法です。
無理に工具を入れる方法を考えるより、締めやすい構造へ変更する方が確実な場合もあります。
設計時に確認したいポイント
ボルトを配置したら、次の項目を確認してみましょう。
- ボルトを挿入するスペースがある
- 六角レンチやスパナを差し込める
- 工具を回すためのスペースがある
- 締付作業時に周辺部品が邪魔にならない
- メンテナンス時にもボルトを緩められる
3D CADを使用している場合は、実際に使う工具の簡易モデルを配置して確認する方法も有効です。
特に狭い場所では、工具の外形だけでなく、差し込む方向や作業時の動きまで確認すると安心です。
まとめ
今回のポイントは、
「ボルトが取り付くこと」と「工具で締め付けられること」は違う
ということです。
CAD上で部品同士が干渉していなくても、実際の組立作業が成立するとは限りません。
ボルトを配置するときは、
「このボルトは、どの工具で、どの方向から締めるのか?」
を考える習慣を持つことが大切です。
工具スペースまで考えた設計が、組立時のトラブルや現場での手戻りを減らすことにつながります。
次回は、「部品同士の穴位置が合わない」 という失敗事例を紹介します。
